俳優の門脇麦さんは、1月19日からスタートするNHK大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインを演じる。映画「愛の渦」で脚光を浴び、必要ならヌードも辞さず、自分を追い込み、役を作り上げていく門脇さんを、今、監督たちはこぞって起用したがる。「キメ顔」を持たない門脇さんの惹きつける力を追った。AERA 2020年1月13日号に掲載された「現代の肖像」から一部紹介する。
12月のNHKスタジオ。門脇麦(かどわき・むぎ)(27)は大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」の収録現場にいた。15歳という設定ゆえか、前髪をちょんまげにしたおさげ姿。くっきりとした眉に、蜜柑(みかん)色の着物が愛らしい。
セットの準備が進むあいだ、廊下のソファに「普通に」座っている。大河のヒロインなのに、まるで俳優然としたところがない。自然に、淡々と、一人でいる。そんな様子をスタッフや周囲の人々が、気持ちよく見守っているのがわかる。
が、本番。「よーい、スタート!」の声がかかると、門脇はすん、と役に入っていく。演技の前にとった間(ま)と重要なセリフは、絞り出されるような切なさを内包し、あきらかに場をさらった。
門脇は2014年の映画「愛の渦」で一躍、表舞台に躍り出た。劇団「ポツドール」主宰の三浦大輔(44)が自らの舞台を映像化した作品。乱交パーティーに集まった男女の会話劇で、地味だが実は性欲が強い女子大生という難役だ。全編123分中着衣シーンが18分30秒という衝撃もさることながら、内向的なヒロインが自らを解放していくさまを繊細な芝居と透明感をもって演じ、人々を驚嘆させた。
15年にはNHK連続テレビ小説「まれ」でヒロインの友人役を演じ、強い印象を残す。16年には映画「二重生活」で単独初主演を果たし、「止められるか、俺たちを」「チワワちゃん」「さよならくちびる」など話題作に続々と主演。そして20年、大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインに抜擢(ばってき)された。