○○ペイは自分のスマホにQRコードやバーコードを表示させて店側の端末で読み取ってもらうか、店側に表示されているQRコードを自分のスマホで読み取り、支払額を自らで入力する仕組みだ。事前にチャージした残金から支払われるか、自分のクレジットカードから引き落とされるが、死後に問題となるのは、事前チャージ方式。PayPayでは一度に保有できる残高の上限額は現在500万円。LINEペイは100万円と、スマホ内に高額の資産が残っている場合もあり得る。『ここが知りたい!デジタル遺品』などの著書があるライターの古田雄介さんは次のように指摘する。

「アカウントの持ち主が亡くなった時点で、アカウントの相続を想定していない規約のサービスが多いです」

 例えば、PayPayやLINEペイの利用規約にはサービスの「一身専属性」が明記されている。たとえ相続人であっても、残高を引き継いで利用することはできないルールだ。

 ただ、古田さんによると、PayPayやLINEペイなどは遺族からの申し出に対応してくれて、死亡診断書や故人との続柄がわかる書類などを提出して認められれば返金してもらえる。だが、遺族がペイを利用していたことに気づかなければ、資産が失われてしまうのだ。

「デジタル機器が使われるようになってまだ30年ほど。相続のノウハウがたまっておらず、業界ルールもない。さまざまなトラブルが想定されるので、自衛が必要です」(古田さん)

 その自衛策が「メモ」だ。伊勢田さん、古田さんともに「スマホのパスワードを紙に書いて残すこと」の大切さを強調する。

 難しいことではない。名刺大の紙に、誰のどのスマホかということと、そのパスワードを書くだけでいい。

「書いたメモを生前に見られたくない場合は、修正テープで上から二重に消しておくとスクラッチカードのようになり、後で10円玉で削るとパスワードが出てきます」(古田さん)

 これを財布や通帳の間など、遺族が確実に見る場所に入れておけばいい。ネット銀行やネット証券を利用している場合は、銀行名や証券会社名を書いておくとなおいい。

「死はいつ誰に訪れるかわかりません。この年末年始には各自でスマホのパスワードをメモに残すなどしてほしい」(伊勢田さん)

(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号