――和嶋さんは駒澤大学仏教学部のご出身です。仏教青年会にも入っておられて、仏教的な世界観は歌詞にも反映されています。

和嶋:哲学をやりたかったんですが、どこも哲学科は結構偏差値が高くて。ならばアジアの哲学は仏教だろうと、仏教学部に進みました。私でも入れていただいたということで駒澤には感謝しています。

――一方ナカジマさんは理系で、東邦大学理学部物理学科のご出身です。

ナカジマ:学生時代は、とにかく数字しか得意じゃなかった。高校時代に、将来は絶対ドラムで食っていくと決意して、高校を出たらアルバイトをしながらいろんなバンドに入って頑張ろうと思っていたけど、バカだから大学に行かないと思われるのが嫌で、高3だけ勉強したら推薦で大学に入れて、ラッキーでした。

――ドラムと理系的センスの関係について書かれていました。

ナカジマ:ドラムって電気がなくても大きな音が出せるのが魅力だと思うんです。ドラムを叩きだしてすぐの頃は、難しいことやらずに、正確にキープだけしてたらほめられて、「もしかして俺、やれっかも!」と思ったんです! その頃から感じてたんですが、音符って結構数字だなって。もちろん休符も。最初から、俺の頭の中では、ドラムの音符がずっと数字で流れていたんですよ。だから性に合っていたんでしょうね。もちろん、数字だけじゃ絶対に表せないし数字だけでは演奏はできない。強弱があり、お互いの打点や縦線がずれているからこそ、かっこいいグルーヴになるということも、今ではわかります。

――和嶋さんの歌詞の文学性を見ていますと、和嶋さんが小説を書いたらどういう作品になるんだろうなと思います。

和嶋:小説を書くなら、バンドのイメージとは違って純文学的なものを書いてみたいです。私小説にはならないと思いますが。でもまったく経験していないものは書けないし、経験してきた中で書きたいという題材はあります。僕が小説を書くと、いかにも怖い話や気持ち悪い話と思われそうですが、それとは違うものを書きたい。最終的には美しいものが残るような。たとえば貧乏な話、失恋の話、苦労話を書いたとしても、最終的には生きる歓びが残るようなものを書きたいですね。

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 今年30周年のメモリアルイヤーの人間椅子。初の公式本『椅子の中から 人間椅子30周年記念完全読本』(シンコーミュージック・エンタテインメント)、30周年記念アルバムの「新青年」(21枚目オリジナルアルバム)が発売中だが、12月11日には全曲英語訳詞付きの「人間椅子名作選 三十周年記念ベスト盤」が発売される。現在、「バンド生活三十年~人間椅子三十周年記念ワンマンツアー」で全国を回っているが、12月13日(金)には東京・中野のサンプラザホールでファイナルを迎える。(編集部・小柳暁子)

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