修学旅行の高額化が進んでいる。海外、国内、近場などで費用が異なり、生徒が行き先を選ぶケースも増えた。修学旅行まで「身の丈」でいいのか。AERA 2019年12月2日号から。
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そもそも修学旅行の金額や期間は、少なくとも公立校では、学校が自由に決めていいわけではない。今年度の各都道府県と政令指定市の実施基準の一覧を、日本修学旅行協会(東京)がまとめている。
具体的な金額の目安を示しているのは、東京都や埼玉県などの13都県と、仙台市や川崎市など8市。東京都では、国内で8万6千円、海外だと11万5千円(いずれも税抜き)。都立高の校長を歴任した同協会の竹内秀一理事長(66)によれば、「1円たりとも基準からはみ出すことは許されなかった」と言うほど、厳密な運用が求められている。
そのほか、「基準は定めていないが、低廉にすること」(新潟県)、「全員参加できる程度の額」(滋賀県)、「特になし」(福岡市)など、自治体によって表現や基準はまちまちだ。
大分県の場合、高校では期間を「5泊6日以内」とし、旅費は「保護者の経済的な負担過重にならないようにする」とある。高校生の長男の修学旅行先が、アンケートにより18万円のベトナムに決まったという会社員男性(46)は、その後も県内の高校の修学旅行を調べ、県教育委員会の通知で金額の基準が示されていることを知った。それによれば、国内なら8万5千円程度、韓国も8万5千円程度、中国、台湾、東南アジアは11万円程度、その他(オーストラリア等)は15万円程度。長男の学年のベトナム旅行はその後、高校側の配慮で18万円から17万円になったが、通知の基準より6万円も高いままだ。
そんななか、全員が修学旅行に行けるように工夫を凝らす教諭もいる。
大阪府立佐野工科高校の3年生たちは昨年冬、3泊4日で北海道へ出かけた。費用は約9万円で、スキーが主な目的。17年4月、五十棲由佳子教諭(55)は、入学式後に教室で初めて対面した生徒と保護者に提案した。