「修学旅行のお金は、社会経験の一つとして自分で稼がせてください」
もちろん、強制ではないから、結果的に保護者に負担してもらう生徒もいた。五十棲教諭がこう提案したのは、経済的な事情で参加できない生徒を数多く見てきたからだ。そこには、共通するある「状況」もあった。
「お金を払えていないことを、保護者が子どもに伝えられていないことが多いです。生徒は疑いもなく旅行に行くつもりでいて、最後の最後で行けないことを知るのです」
経済的な事情で参加できない生徒を出さないよう、心を砕いてきた。業者との交渉に加え、料金が高くなるハイシーズンを避けたり、事情を抱える保護者と話し合いをしたり、「ものすごい努力を要した」と明かす。
修学旅行は学習指導要領で「特別活動」の一つに位置付けられる。前出の竹内理事長も、「他の授業と同じように全員参加が大原則」と訴える。
先日、萩生田光一文部科学相が英語民間試験について「身の丈に合わせて」と発言、格差容認ではと波紋を呼んだ。生徒と保護者に「身の丈」を強いるばかりではなく、全員が参加でき、意義のある修学旅行を行う工夫が学校側に求められている。(編集部・小田健司)
※AERA 2019年12月2日号より抜粋