小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
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11月12日、キュカが厚生労働省に署名を提出。その後、小島さんらと共に記者会見を行い、就職ハラスメントの防止を訴えた (c)朝日新聞社
11月12日、キュカが厚生労働省に署名を提出。その後、小島さんらと共に記者会見を行い、就職ハラスメントの防止を訴えた (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 就職活動を行う学生に対して、企業側がセクハラやパワハラ、SOGIハラ(性的指向や性自認に関する差別や嫌がらせ)などを行う「就活ハラスメント」。これまで見えていなかった実態が少しずつ報じられるようになってきました。就活中の学生はとても弱い立場に置かれています。採用面接で「恋人はいるの?」と詮索されたり高圧的な態度をとられたりしても、印象が悪くなることを恐れて抗議できません。中には志望企業の社員との接触で性暴力被害に遭う学生も。弱みにつけ込んだ卑劣な犯行には強い憤りを覚えます。

 就活で嫌な目や怖い目に遭っても、相談する場所がわからない。学校も企業の目を気にして動いてくれない。将来のことを考えたら、黙って我慢するしかないのかも……とつらい思いをしている学生はたくさんいるはずです。

 日本の組織では、年功序列や役職の上下関係が私的な領域にも及び、まるで主従関係のようになることも。上役や先輩の言いつけには、どれほど理不尽でも二つ返事で従うのが美徳とされてきました。採用面接では企業側が強い権限を持つ上、労働者ではない就活生は法律にも守られていないため、そうしたハラスメント習慣が野放しになっているとも言えます。

 そんな状況を変えようと、11月12日に有志の学生たちとハラスメントの相談コミュニティーサイト「キュカ」の代表が厚生労働省を訪れ、就活生に対するハラスメント防止を求める要望書と1万1333筆の署名を提出しました。被害をなくすには、国が企業に就活生へのハラスメント対策を義務付け、実態調査などを行うことが重要です。学校側も沈黙せず、連帯して「すべての学生をハラスメントから守ろう」と国や企業に働きかけてほしいです。「働く=暴力に耐える」という文化を根絶する時が来ています。

AERA 2019年11月25日号