【鴻上さんの答え】
飛行機さん。大変ですね。本当に、本当に、大変ですね。
僕は飛行機さんをなぐさめる言葉を持ちません。飛行機さんの悩みを解決できる方法もアイデアもありません。飛行機さんの苦しみや哀しみをなんとかする能力もありません。
僕にできることは、飛行機さんの文章を読み、「ほがらか人生相談」で、こうやって「飛行機さん、読みましたよ。何度も何度も、飛行機さんの文章を読みましたよ」と告げることだけです。
人間の力ではどうしようもない時、宗教に救いを求めることは珍しいことではないと思います。
説明できないこと、理不尽なことを説明してくれる大きな物語が宗教です。何も悪くない、何の罪もない12歳の息子さんが突然、余命一年と宣告される。こんな理不尽はありません。あってはならない、胸張り裂ける現実です。
仏教の専門家の人が「因果応報」についてなんと答えるか僕は分かりません。「因果応報」とはどんな場合でも受け入れることだと答えるのでしょうか。それとも、この場合は「因果応報」とは違うと答えるのでしょうか。
飛行機さんの文章から、飛行機さんがとても聡明な人だと分かります。
そして、とても前向きで誠実で勇気ある人だということも分かります。
こんなつらい現実の中で書かれた文章から、飛行機さんの、歯を食いしばって前向きに生きようとする苦労が感じられます。そして家族のみなさんの強さや努力もひしひしと感じます。
母親のつらさも、高校2年生の長男さんのつらさもどれほどかと思います。それなのに、ただ暗くなるのではなく、笑いも起こる家庭は本当に奇跡のように素晴らしいことだと思います。
飛行機さん。よく「ほがらか人生相談」に投稿してくれました。僕は何もできませんが、飛行機さんと家族のみなさんが毎日がんばっているということを知っただけでも、僕はよかったと思います。
僕に唯一できることは、飛行機さんと家族のみなさんが次男さんと過ごす日々が、どうか、一日でも長く、穏やかでありますようにと祈ることだけです。
飛行機さん。メールを送ってくれて本当にありがとうございました。
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