ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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もう、お殿様ですよ。だいたい立派な箱に入ってるでしょ。お付きの人を従えて、飾り付けられた籠で「おなーりー」っていらっしゃる感じ。お目通りがかなうのも年に1回とかですしね。何だったら、調理するときも白い手袋をしちゃうぐらいの勢いです。希少さって重要で。イベントの会場で「関係者以外立ち入り禁止」の線から出てこないアーティストは、線の外側をうろうろしてる人よりスターに見えるのと同じですね。
一番好きなマツタケ料理は土瓶蒸しでございます。スープなのに、専用の器で、いちいちおちょこに注いで飲む。そんな料理、フレンチにだってありません。出てきたらまずふたを開けて香りを楽しみます。何切れ入ってるか、なんてことは見ないふりで「マツタケさん、お久しぶりです」って。3杯ぐらい飲んだところで、またふたを取ってマツタケをいただきます。最後まで残すと、なんだか出し殻みたいで寂しいじゃないですか。あの、キュリッといく歯ごたえ。スライスされた白い断面以上に、外側の荒々しさが高級感を際立たせる。至福のひとときです。
※AERA 2019年11月11日号