私の長男も「見た目問題」の当事者だ。顔の右側の表情筋が不形成のため、笑うと顔が左右非対称にゆがんでしまう。悩みがあったら、いつでも相談してもらいたいという思いから、「顔でいじめられてはいないか?」と尋ねてきた。

 ただ、この言葉には「君の顔はいじめられやすい顔だ」という意味が含まれる。そんな親の意識が、息子にすり込まれてしまう恐れがあると気づいた。だから、あえて顔にフォーカスすることなく、「最近、学校はどうだ?」とだけ聞くように変えた。彼の口から顔の悩みが出れば、そのときに向き合えばいい。今はそう思っている。

 だが、外見の話題が家庭でタブー視されるのも、子どもを苦しめることにつながる恐れがある。NPO法人「眼瞼下垂(がんけんかすい)の会」代表理事の大場美津子さん(52)は、「親に悩みを共有してもらえず、恨んでいる」という多くの相談を受けてきた。眼瞼下垂は、まぶたを持ち上げるための筋肉が弱い病気だ。手術をすれば、見た目は改善される。

「手術後、親としては完治したものとして眼瞼下垂は過去の話となりやすい。ある当事者は外見に違和感が残っていたため再手術を望んでいましたが、親に相談できずに苦しんでいました」

(朝日新聞記者・岩井建樹)

AERA 2019年10月21日号より抜粋