「内申制度がかえって子どもの意欲を削いでいるのでは」と疑問を投げかけたのは、神奈川県に住む女性(52)。公立中3年の息子は2年生の時、怪我のために体育の実技試験などを受けられない時期があった。腹痛で遅刻が続いたことも重なり、成績は目に見えて低下。それが3年生になってからは体調も戻り、受験への気合も高まって成績は急上昇した。ところが女性は「仮にこれからオール5を取っても、志望校は1、2ランク下げざるを得ない」と言う。

 同県では9教科×5段階評価で2年時を45点満点、3年時を倍の90点満点の計135点満点で計算する。2年時の成績が3分の1カウントされるため、3年で頑張っても、伸びには限界があるのだという。女性はこう言う。

「思春期の微妙な時期を、運よく乗り切れた子だけが高評価され、ちょっとでもつまずくと挽回できない。教育とは子どものやる気を促し、頑張りを評価すべきものなのに、全く逆になっている」

 内申制度が教育を歪めているという指摘は教師からも聞かれた。都内の公立中学の教員(35)は数年前のことが忘れられない。

「おたくの学校で全教科において1の評定が1人もついていない理由を知りたい」

 そう言って教育委員会が学校に乗り込み、全担任が評価基準について事細かに聞かれたのだ。「一人ひとりの確かな学力の定着」を目指して絶対評価が導入されたのだから、1がないことは本来喜ばしいことなのに「まるで取り調べのようだった」という。教員は憤りを隠せない。

「職員室で『うちの学年は今年1がついて良かった』という会話が交わされることもあります。公平性は大事ですが、それを外部に示す手段として何が何でも1をつけるなんて、どう考えてもおかしいでしょう」

(編集部・石臥薫子)

AERA 2019年10月14日号より抜粋

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