回復期にある人にとって、復帰を阻むのは、社会の側のうつ病の理解の乏しさだ。ネガティブな情報が氾濫しているからだ。うつ病になったらその人は「四六時中、状態が落ちている」といった誤解もある。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。
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うつ病の回復期にある札幌市の野村和司さん(42)は言う。
「正直、うつのレッテル貼りはやめてほしいですね。思い切り笑うこともある。相変わらず、僕はおしゃべり。姪に会う度、『なんて愛おしいんだ!』と感じる。普通に人間なんですよ(笑)」
発病は、35歳。仕事上のトラブルや、付き合っていた女性との別れなどが原因だ。1年半後に回復。だが、5年前に2度目のうつが襲った。
クラウドファンディングで資金を募り、ウェブで配信する大型のスポーツ娯楽番組の制作に携わっていた。ロケハンに出ても全然頭が働かなかった。パニック障害も併発し、以来、電車に乗れなくなった。原因は、初回のうつ病から回復した後のオーバーワークだった。「また全開で仕事が出来るぞ!」という嬉しさと、「働き盛りの十数カ月間を取り返さなくちゃ」という焦りの両方があった。
拍車をかけたのは、大手の取引先から受けたパワハラだった。到底のめない取引条件を提示され、罵詈雑言を浴びせられた。
さらに、野村さんは、クラウドファンディングの出資者へのリターンも公言しており、責務を果たさねばというプレッシャーがあった。症状が重い時には、食事は「3食チャーハン」。パソコンの明かりだけで暮らし、風呂にさえ入らなかった。