がんや病気に効くという食のウワサは枚挙にいとまがない。海外で活躍する医師がエビデンスレベルを判定した。AERA 2019年9月23日号から。
【ナッツやワインはホントに体にいいの?気になるエビデンスを医師が解説】
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医食同源という。◯◯はがん予防になる、◯◯で心疾患のリスク減──。世の中にはそんなウワサがごまんとある。「××大学の最新研究で結果が出た」なんていうもっともらしい説明もついてくる。耳に心地よいことは信じたいのが人情だ。
だが、その説、ホントに信じていいのだろうか。なかには信頼に足る研究では否定されたり、適正とはいえない条件の研究だったり、科学的根拠=エビデンスのレベルはさまざまというのだ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部助教で、食と健康に関する研究に詳しい津川友介医師は言う。
「日本に帰るたび、食事や健康に関心が高く、書店にさまざまな健康本が並んでいることに驚きます。残念ですが、そのすべてが正確とはとても言いがたい。うのみにせず、正しい知識を持つことが肝要です」
食べ物についての研究には、ランダム化比較試験と観察研究の2種がある。前者は対象を2グループに分け、片方に特定の食品を取ってもらい、終了後に両グループを比較する。後者は似たような食生活を送る集団を追跡調査しデータを取り、食品の効用を推測するというものだ。
「ランダム化比較試験のほうがエビデンスは強く、さらにいくつかの研究を集めて分析した『メタアナリシス』が最強のエビデンスです」(津川医師)
ランダム化比較試験が行われ、メタアナリシスでも同じ結果を導き出せることが、「エビデンスがある」といえるのだ。
津川医師によると、これまでの研究で体によいというエビデンスのある食品は、魚、野菜・果物、大豆、オリーブオイル、ナッツなど。炭水化物は、玄米など精製されていないものが望ましいという。逆に、健康に害があると考えられるのが、牛肉や豚肉、白米などの炭水化物、バターなどの飽和脂肪酸だ。