人間誰しも大きな病気になれば慌ててしまう。いざという時に医師といい関係を築き、納得できる治療を受けるには、健康な時からの「備え」が肝要だ。AERA 2019年9月23日号から。
* * *
●極意その1 初診にはメモ持参、「表現」は医師に聞く
外来の医師は、1日に何十人もの診察をするので忙しい。限られた時間にうまく会話するにはコツがある。「たかが風邪」であっても、コツを掴めば診察はぐんとスムーズになる。
福島県の総合南東北病院外科医長の中山祐次郎医師が勧めるのは下記のようなメモを作っておくこと。どこが、いつから、どうつらいのか。簡単な経緯や聞きたいことを箇条書きにする。
患者アンケートでは、「どんな痛みか」と聞かれても、言葉にできないという声もあった。大阪大学の大竹文雄教授は言う。
「一般の人が医学的な痛みの表現方法をすべて知っているはずはない。医学の教科書には『刺すような痛み』『鈍い痛み』『ピリピリする』などがあって、『こういう時は○○が疑われる』と書いてある。医師側からいくつか例を出して、『その中ではどれ?』と聞いてあげると答えやすいでしょう」
医師が聞いてくれなければ、患者から、どういう表現があるのか聞いてみるのも手だ。
●極意その2 予め数を絞り積極的に質問を
質問は数を絞った上でメモにまとめる。「五つ聞きたいことがあります」などと質問数を最初に明示すると、医師側も時間のメドを立てやすい。「今日は無理」と言われたら、いつなら時間が取れそうか聞いてみよう。
ある循環器内科医は、「細かい質問は看護師に聞くのもおススメ。看護師で答えられない質問だけ医師に聞くようにすればスムーズ」と話す。
中山医師は、「がんを告知されたら、担当医が年間何人くらいそのがんの治療をしているか尋ねていい」という。近年は医療の細分化が進み、医者1人の知識や技術にはムラがあるからだ。
「聞きづらいかもしれませんが、今後の治療を左右する大事なこと。質問をしただけで怒る医師は考えもの。不快に思っても、それを患者さんにぶつける医師は避けたほうがいい」(中山医師)