ホワイトハウスで記者団からの質問に答えるトランプ大統領。日韓問題については、積極的な発言をしていない (c)朝日新聞社
ホワイトハウスで記者団からの質問に答えるトランプ大統領。日韓問題については、積極的な発言をしていない (c)朝日新聞社
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 日ごとに増す日韓の緊張・対立関係。米政府は、この事態に警戒を強め、米メディアもその有り様を詳しく伝えている。その一方で、米国こそが、この流れの発端をつくったという指摘もある。AERA 2019年9月16日号に掲載された記事を紹介する。

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「最悪の事態になる」

 ロンドンにある調査会社TSロンバードのアナリスト、ローリー・グリーン氏は、米紙ニューヨーク・タイムズに対し、日韓の通商関係悪化の動きに警鐘を鳴らした。日韓の間には、代替が困難なサプライチェーンが構築されているためだ。

 ことの発端は今年7月4日、日本政府が韓国に対して半導体などの材料の輸出規制を強化したことにある。文在寅(ムンジェイン)大統領はじめ、韓国政府高官はこれを元徴用工問題に絡む報復措置だと反発、撤回を求めた。

 規制が強化されたものには、日本の世界シェアが9割に及ぶものもある。韓国サムスン電子やLG電子は、米国におけるハイテク機器や白物家電の販売で1、2を争い、米国の家電量販店は、2社の製品であふれている。

 両社が半導体製造の材料調達で危機に陥れば、世界的に影響を与える可能性があると米メディアは報じている。韓国政府は今後、半導体の素材を含む部品などの開発に、約6兆ウォン(約5千億円)の予算を充てることを決めた。日本企業のサプライチェーンに頼らずに、製造業の生き残りを図るためだ。

 米国が神経をとがらすのは、通商関係だけではない。

 韓国政府は8月22日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。これには米政府も驚かされた。トランプ政権は、協定の更新を要請していたからだ。マイク・ポンペオ国務長官は、「米政府は、がっかりした」とすかさず声明を出した。

「日韓が利益を共有することが重要であることは疑いがない。そしてそれは、米国にとっても重要だ。日韓が、両国の関係を正しい場所に戻すのを期待している」

 また、米政権は北朝鮮がミサイル実験を繰り返すなか、文政権を後押しするために韓国情勢には特別な注意を払ってきたとニューヨーク・タイムズは報じている。タイムズ紙によると、ホワイトハウスのジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官は今年7月、互いを敵対視することはやめるようにと、日韓両国高官に電話で呼びかけた。ポンペオ国務長官は、バンコクで8月上旬に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議でも、同様の要請を繰り返した。

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