実際、トランプ大統領には日韓の関係改善に向けた強い意思が見られない。日韓対立を解決することが大統領選のアピールになると考えない限り、米政府が動く可能性は低いと考えられる。前出のウォーカー氏は、こう指摘する。
「トランプ氏は大統領になってからの2年半、多国間の話し合いではなく、二国間の話し合いに重きを置き始めた。米中貿易摩擦も、日韓の緊張・対立も、反グローバリズムのこうした流れと無縁とは言えない」
米中の貿易摩擦も、トランプ氏が4回目の関税引き上げを実施したことで、さらに緊張が高まっている。9月1日からは、一部の製品で値上げが始まり、値上げは段階的に続くとみられる。そうなれば、大きなダメージを被るのは、米国の消費者だ。これも、「トランプ大統領」の出現によって起きた。
日韓間の対立の発端は、昨年10月、韓国の最高裁判所にあたる大法院が出した元徴用工問題についての判決にある。続いて、文大統領が、15年の「慰安婦合意」を反故にした。米政府にとっては、不意を突かれたということになるが、この流れがトランプ大統領の出現に起因していることは、間違いない。
米紙ワシントン・ポストに寄稿したコラムニスト、マックス・ブート氏はこう指摘する。
「日韓両国は、国粋主義者的な有権者の声に引きずられず、事態の悪化を防ぐ必要がある」
(ジャーナリスト・津山恵子)
※AERA 2019年9月16日号