大規模な三国志展が都内で開催中、10月からは九州でも開催される。初心者からマニアまで、時代を超えて人びとを惹きつける三国志の魅力に迫った。
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「いままでの英雄中心の三国志像と違う。その背後にある時代背景や人々の生活も鮮やかに見えてきます」
約2時間かけて会場をじっくりと回った都内在住の三国志ファンの男性(48)は興奮気味に語った。
7月9日から東京・上野の東京国立博物館平成館で開催中の特別展「三国志」は連日盛況で、来場者は10万人を突破した(8月2日時点)。
紀元前202年から220年まで、中国で400年あまり続いた漢王朝。その後期、民衆動乱が続く中、各地で台頭した有力諸将が築いた魏・蜀・呉(ぎ・しょく・ご)がしのぎを削る三国時代が幕を開ける。曹操(そうそう)や劉備(りゅうび)といった英雄が活躍したこの時代は、唐の時代に正史と定められた歴史書『三国志』、後に小説『三国志演義』として後世に語り継がれ、日本にも多くのファンがいる。
東京国立博物館学芸研究部調査研究課東洋室主任研究員で今回の展覧会を企画した市元塁(いちもとるい)さん(41)はこう語る。
「三国志の展覧会を開いてほしいという要望は常に寄せられていました。ただ三国志の時代は展示できるような文物が少なく、展覧会は難しいというのが研究者の常識。2008年から09年にかけて曹操の墓である『曹操高陵』が発掘されたことで、この出土品が出品できるなら実現できると思いました」
曹操は魏の基盤を作った武将で、曹操高陵は現在の河南省安陽市にある。また05年には呉の首都・建業(けんぎょう)だった江蘇省南京市で上坊1号墓という大規模な墓が見つかるなど、これまでになかった規模の遺跡が発掘調査された。ここ十数年でのこうした考古学的発見のおかげで、点でしかわからなかったこの時代が、面として俯瞰できるようになったという。