

東京五輪・パラリンピックの選手村が大会終了後にリフォームしてマンションとして活用される「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」。その部屋を購入するための抽選が、炎天下の東京・晴海で行われた。平均倍率は2.57倍。最高倍率は71倍に達した。第1期販売で最も高い2億3千万円(152.1平米)の部屋は競争率が11倍、最上階の18階にある1億3320万円(127.5平米)の一室は、なんと44倍。これはレインボーブリッジと東京湾を挟んで豊洲市場が見渡せる抜群の眺望を誇る部屋だ。抽選に参加した人々の真意は様々だ。
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レインボーブリッジが見える部屋に人気が集まる心理について、「4部屋を申し込んで3部屋当てた」と言う男性不動産投資家は「生まれてきたかいがあったと思える。眺望代だけで2千万円は上乗せしている」とも語る。だが、自宅の眺望にそれだけの上乗せを支払えるのは、ごくごく限られた人だけだ。
今回、マンションのモデルルームでは「申し込みは1人1部屋まで」と告げられていた。だが、それは原則で、現金で払える場合や住宅ローンの融資枠があれば問題なく契約が成立する。金が払えるなら何室でもよいということだ。
彼らが殺到した理由の一つは、ずばり販売価格だ。都から用地が激安価格で業者に払い下げられたことで、周辺より安くなるという評判が立った。「期待したほど安くはなかった」という声もあるが、いずれにせよ、11社連合の業者には多額の利益が予想される。投資用に買ったIT企業経営者も、ぼそっと「(業者の買った)土地代が安いのは知っています。ぼって(もうけて)いますよね。その分、安くしてほしいですけどね」と付け加えた。
この都有地の激安払い下げや業者の優遇については、小池百合子都知事を相手取った住民訴訟も起きており、都議会でも批判や疑問の声が強い。都知事もようやく7月になって、業者が当初想定した分譲収入から1%以上増加した場合、増収分から経費を除いた半額を都に追納させる、などと表明した。批判に押された格好だ。
ただ、こうした業者優遇批判をよそに、選手村マンションに申込者が殺到したことに、マンション開発業者は驚きを隠さない。中堅のマンションディベロッパー幹部が言う。