宇田さんはそこに置かれていた象のオブジェを指して続けた。
「子どもの頃はピンクの象とか平気で描いてたのに、だんだん周りにどう思われるかを気にして、これみたいに青い象しか描けなくなっちゃう」
今度は伊藤さんが引き継いだ。
「私たちが作りたいのは、ピンクの象が描けることを忘れて青いペンを取ろうとする人に『ピンクの象を描いてもいいんだよ』って思い出させて、実際描き出すまで並走してあげるプログラムじゃない?」
最終日のプレゼンでは、3チームとも中間プレゼンとは全く違う事業案を発表した。WAC WACは高校生が自分に向き合い、自分を認めていくプロセスをサポートする「ピンクエレファントキャンプ」を提案。パンプキンスープチームが披露したのは「ケンカ分析アプリ」だ。ケンカの音声を録音し、AIで感情を分析し、自動的にテキストに書き起こすことで、あとから振り返りができるというアイデアだ。母親とのケンカに悩むメンバーの話に発想を得た。
HANABIチームは「未来のタイムカプセル」を提案。自己肯定感が下がっている人に対して、その人のことを大切に思っている人から事前に預かっておいた手紙や思い出の品を届けるサービスだ。
最終プレゼンは3チームとも、中間発表の3倍近い得点を獲得。1位にはWAC WACが輝いた。
「18年間でここまで熱中できたのは初めて。自分の可能性を感じることができた」(慶應義塾湘南藤沢高等部2年の畑中駿之介さん)
「いろんなバックグラウンドの人とこんな経験ができて嬉しい」(ドバイのインターナショナルスクールに通う岩間寧々さん)
大学生を対象にしたインターンは自社に採用する学生の能力を見分けるツールとして使われるのが通常だが、高校生インターンは若者の才能を伸ばすきっかけを与える機会だ。柴田社長も満足げに話した。
「高校生は大学生と違って採用と直接関係がないからこそ、純粋な気持ちでぶつかり合えた」
8月22日からは中学生向けのインターンを実施する予定だ。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2019年8月12・19日合併増大号