「日本がインドより低いの? それは驚き! たしかにインドでは女性の政治参加は多いけど……。ただジェンダーギャップは私たち女性自身が『そういうものだ』と受け入れてしまっていることも問題。女性も男性のようにもっと自分を前に押し出していい」

 現在、監督はランキング12位のフランスでフランス人の夫と1児と暮らしている。脚本家を経て、本作が初監督作。

「ビジュアルの美しさや音楽の使い方はウォン・カーウァイの『花様年華』にインスパイアされた。日本の映画では『おくりびと』の、儀式や所作の美しさがすごく好き」

(フリーランス記者・中村千晶)

◎「あなたの名前を呼べたなら」
2018年カンヌ国際映画祭批評家週間のコンペティション部門でGAN基金賞を受賞し話題に。8月2日公開

■もう1本おすすめDVD 「青いパパイヤの香り」

 メイドと雇い主の恋──と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「青いパパイヤの香り」(1993年)だ。後に村上春樹の『ノルウェイの森』を映画化することになるベトナム出身、フランス育ちのトラン・アン・ユン監督のデビュー作。エキゾチックなベトナムの風景と、みずみずしい映像がセンセーションを巻き起こし、カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞している。

 51年、サイゴンの屋敷に田舎から10歳の少女ムイが奉公人としてやってくる。家には優しい女主人と放蕩旦那、3人の息子たちがいた。年配の女中に仕込まれ家事をこなすムイは、長男の友人クェンに淡い恋心を抱く。10年後、美しく成長したムイは、クェンの家に奉公に出ることになるがクェンには婚約者がいた──。

 筆者が10代のころ猛烈に心を動かされた作品。いま観ても少女ムイのけなげな愛らしさ、そして無垢な献身が最大の“女の武器”になる展開にドキドキさせられる。

 成長したムイに女主人が「お前が次男の嫁になればと思っていた」と語るシーンがある。ベトナムとインドでは使用人と雇用者の関係も違うのか、と改めてさまざまを思う。

◎「青いパパイヤの香り」
発売・販売元:カルチュア・パブリッシャーズ
価格3800円+税/DVD発売中

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2019年8月5日号

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