お見合い相手との相性にDNA検査を利用する結婚相談所も現れている。その仕組みと精度はいかほどのものなのか。
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「気が楽に持てて、まったく嫌な感じがしませんでした」
愛知県内の看護師の女性(42)は6月、東京都内の結婚相談所で紹介された44歳の男性と、都内の喫茶店で初めて会ってそう感じた。この相談所の売りは、DNA検査の結果をもとに会員同士の相性を判定していること。女性は事前に、この男性と「相性がいい」と聞かされていた。
大きな病院に勤め、忙しい20年間を過ごしてきた。これまでに縁がなかったわけではないが、タイミングが合わなかったり、相手が煮え切らなかったり。女性はいま、検査の結果を重視して前に進んでいいものかどうか悩む一方、こうも思う。
「DNA検査の結果が良くなければ前に進む気持ちにもならない。幸せな夫婦関係を築きたいという将来の理想を考えれば、やっぱり結果が良いに越したことはないですから」
一方の男性も、面会でこの女性に好感を持ったあと、相談所から、DNA検査で相性がよかったことを聞かされた。
「最初から波長が合ったので、『なるほどな』と思いました」
男性も今、進展の予感を抱いている。それは、DNA検査の結果がよかったからなのか。
「結果はもちろん参考にしますが、やっぱり実際に会ってどう思ったかという印象が一番大切だと思っています」
この結婚相談所は伊達蝶江子(ちえこ)さん(55)が経営する「ブライダルプロデュース・ピープル」。相性の判定に使っているのは「HLA遺伝子」という、免疫にかかわる遺伝子だ。この遺伝子の型が似ていない男女が子どもを作ると、免疫が強い子になりやすいと推測される。以前「恋愛遺伝子」として話題になったので、記憶している読者も多いだろう。
恋愛遺伝子を有名にしたのは、スイスの動物学者が1995年に行った、「汗かきTシャツ実験」と呼ばれる実験だ。
約100人の男女を被験者に、男性は2晩続けて同じTシャツを着て寝る。その後、女性たちは汗がしみたTシャツの中から好みのニオイを選ぶ。その結果を分析すると、女性はニオイで自分の遺伝子の型とかぶらない男性をかぎ分ける傾向があることがわかった──というもの。言い換えると、女性はHLA遺伝子の型が自分と遠い、つまり免疫が強い子どもが生まれやすい男性のニオイを好む、ということになる。