ピープルがDNA検査を依頼しているのは、遺伝子研究や遺伝子検査のサービスを手がけるスイス企業「ジーンパートナー」。ジーンパートナーは前出のTシャツ実験をヒントに、DNAのうちHLA遺伝子にかかわる特定の部分を分析し、結婚相手としての適否を見分ける手法を確立したという。世界50カ国で使われ総合的な相性は0~100%で評価される。70%を超えると相性が良いとされ、冒頭の男女の場合は、76%だった。
アエラの取材にメールで応じてくれたジーンパートナーのタマラ・ブラウン博士は、自社の技術の意義をこう強調する。
「私たちの科学的アプローチはHLA遺伝子を分析することを基礎としており、それは免疫システムで重要な役割を果たすだけでなく、結婚相手の選択や魅力を感じるかどうかにも関連しています。人はそれを自動的に感じ取りますが、(通常の)結婚仲介やオンラインのデートでは不可能です」
前出の伊達さんは5年ほど前、書籍やインターネットで調べてジーンパートナーの存在を知ったという。
「時代はDNAだ」
そう感じた伊達さんは1人でスイスに乗り込み、2015年にDNA検査のサービスを販売する権利を取得した。希望する会員に検査キットを渡し、会員は唾液サンプルをとってジーンパートナーに送る。検査を受けた人にはIDが与えられる。お見合いやパーティーでマッチングするなどして相手のIDを知ることができたら、オンラインで相性を確認できる仕組みだ。
これまでに約300人の会員が検査を受け、その中から12組が実際に結婚したという。
会員以外に、結婚を考えている恋人同士や離婚を考えている夫婦などが、それぞれきっかけ探しのために利用するケースもあるという。
「ただ、結婚や離婚には、検査結果だけでなく考え方や価値観の一致も大切です」
伊達さんはそう強調する。一方、結婚の相性がわかるなら、上司と部下の相性もわかるはずと、同じDNA検査を企業の人事配置に生かすサービスにも参入した。すでに導入事例もあるが、具体的な企業名などは公表できないという。(編集部・小田健司)
※AERA 2019年7月29日号より抜粋