【俳優・モデル】新木優子(撮影/写真部・加藤夏子)
【俳優・モデル】新木優子(撮影/写真部・加藤夏子)

 生きているおもちゃたちの世界を描いた人気アニメーション最新作「トイ・ストーリー4」が7月12日から公開中だ。初の吹き替えに挑戦した新木優子さんが語った。

【写真】新木優子さんが憧れている柴咲コウさん

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 カウボーイ人形ウッディとその仲間たちは、持ち主のボニーのいちばんお気に入りのおもちゃ、フォーキーを捜す旅に出る。その旅の途中でウッディが出会うのが、新木優子さんが吹き替えた人形ギャビー・ギャビー。子どもから一度も愛されたことがないまま、アンティークショップのウィンドーに飾られている。彼女は、「子どもに愛される人生」を夢見ている。

 ギャビー・ギャビーは1950年代に製造されたアンティーク風のおもちゃです。見た目は子どもですが、昔の女優さんのような奥ゆかしい声質にしてほしいということでした。私自身、同世代よりワントーン落ち着いて見られる声質と言われることが多いので、それを生かせるようにしました。ただ、私はすごく早口なので、奥ゆかしさから離れてしまいがち(笑)。落ち着いて話すことを意識しました。基本的にはギャビー・ギャビーの気持ちに寄り添うことができれば、素敵な作品になるのかなと思ったので頑張りました。 

 アフレコでは、NGでの録り直しというわけではなく、いちばんよいところを録るために何度もテイクを重ねた。

 回数を追うごとに、自分自身もよくなっていくのがわかりました。気持ちも入るし、ギャビー・ギャビーの声質や声の出し方もつかめてきて、一定になっていったんです。初日よりも2日目の声の方がしっくりきていたので、1日目にOKになったセリフも改めて録ったりもしました。やっているうちに成長を実感できました。

 難しかったのは笑い声です。普通の人が笑わない「アハハハハ」みたいな笑い声。英語版を参考に雰囲気をつかんでから挑みましたが、人形が笑っていることを表現するのがすごく難しかったです。一瞬ではなく、ある程度続けて演技していかなければいけなかったので、何テイクも録っていただいた記憶があります。

 吹き替えは初挑戦。カメラがないからか、「開放感があって楽しめた」と振り返る。

 手が動いたり体が前に出たり、表情も変わってきたり。気持ちが入って泣きそうになっちゃったりもしました。今までにない「トイ・ストーリー」の魅力が存分に引き出され、進化していると思います。見終わった後に、いろんなものを大切にしたいって思ってもらえるのでは。どの世代にも刺さる作品だと思います。

 物語が展開する一瞬一瞬の中に「決断とドラマ」があると言う。今回初登場のキャラクター、フォーキーの成長も見逃せない。

 フォーキーは生まれたての赤ちゃんのような存在として登場しますが、最初は「自分はゴミだ」と自分の存在価値を理解できないんです。それが、ウッディの説得や思い、ウッディが経験してきた子どもたちと一緒に過ごした時間みたいなものを共有していくことによって、自分の存在をどんどん理解していく。その姿にほっこりします。

 新木さんも小学5年生の時に原宿でスカウトされるまで、「芸能界に行けるとは思ってもいなかった」と振り返る。

 声をかけていただいて、「私にもチャンスがあるんだ」と気づいた時に、「やりたい」と直感的にすぐ思いました。だから、意識はしていたと思うんですけど、自分からは考えていなかったですね。声をかけていただいたから初めて気づきました。

 転機となった作品は「CRISIS(クライシス) 公安機動捜査隊特捜班」と「コード・ブルー ─ドクターヘリ緊急救命─」と言う。

「CRISIS」では大先輩の方々に囲まれて演技をするという経験をさせていただきました。先輩方の足を引っ張らないように緊張しながらも、ものすごくセリフを練習して臨み、現場ではどれだけ自分のことに集中して演技ができるかということを学ばせていただきました。同時に、自信をいただくこともできました。これがあったから、「コード・ブルー」につながったのではないかと思います。「コード・ブルー」では、西浦正記監督から、目の動きや目の表情が大事だと大変丁寧に指導していただきました。そのお陰で、それ以降の作品ではそれを意識して演じることができるようになりました。あのタイミングで指導してくださったのは、本当にありがたかったなと思います。

 俳優として日々大切にしていることは「本を読む」ことだ。

 取材を受ける機会も多いですし、自分の意見をきちんと表現しなければいけない場に出ることも多いので。演じることにも役立つと思います。まだ実在の人物を演じたことがなくて、いずれは時代物に挑戦したいんです。何歳までに何をやりたいという目標はありませんが、年齢とともにその時々に見合う役をいただけるようになるといいなと思います。

 事務所の先輩でもある柴咲コウさんが昔からの憧れで、私が「その役は柴咲さんじゃないと嫌だ」と思うように、私も誰かに「その役は新木じゃないと嫌だ」と思ってもらえるような存在になれたら素敵だなと思っています。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2019年7月22日号