脳の血管が詰まる脳梗塞。薬で血栓を溶かすt−PA治療や、カテーテルで血栓を除去する血栓回収療法など治療法は進歩している。ただし、できる治療は発症後の時間により異なり、有効な治療を受けるには「時間との勝負」となる。
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脳梗塞は、血管の詰まり方により「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3タイプに分けられる。からだの片方のまひやしびれ、ろれつが回らないなどの5大症状がみられたら、軽くてもすぐに救急車を呼ぶことが必要だ。その理由を、横浜新都市脳神経外科病院院長の森本将史医師は「症状が軽い=軽症とは限らないため」と話す。
「ちょっと言葉が出にくい、足が動かしにくいなど軽い症状の場合、小さい脳梗塞だからということもありますが、大きな血管が詰まりかけていて、前兆として軽い症状が起こっていることもあります。放置したことでその後、大きな症状が起こることも少なくありません」
家族に脳梗塞を疑う症状がみられて救急車を呼んだ場合、到着までに準備してほしいものとして、東京慈恵会医科大学病院脳神経内科教授の井口保之医師は、(1)おくすり手帳(2)かかりつけ医療機関の診察券(3)発症時刻(症状に気づいた時間)のメモを挙げる。「昨日の夜寝るまでは元気で、今朝起きたら症状があった」という場合は、「前夜寝た時間」と「今朝起きた時間」でいいという。
「神経が障害される病気の多くは、治療しても発症前のように症状を完全になくすことは難しいのですが、脳梗塞は、早期に適切な治療をすることでかなり症状を改善できる数少ない病気といえます。ただし、そのためには一分一秒でも早く治療を開始することが必要で、この三つはその重要な情報となります。いざというときは慌ててしまうことも多いため、落ち着いて救急隊や医師に伝えてください」(井口医師)
■薬で血栓を溶かす治療法を検討
脳梗塞は、「発症後の時間」により治療法が異なる。そのため脳梗塞の疑いがある場合、病院到着後すぐに診察と検査をおこなう。検査ではとくに、脳の状態をみるMRI検査と、脳の血管をみるMRA検査が重要となる。