佐藤優さん(撮影/写真部・小山幸佑)
佐藤優さん(撮影/写真部・小山幸佑)
この記事の写真をすべて見る

 元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が、参院選の争点や各政党の構図を解説し、どこに一票を投じたらよいか迷った時の考え方も伝授する。

*  *  *

 今回の選挙の争点は、どんな形で議論をしても「安定か」「混乱か」というところに収斂(しゅうれん)します。国民は将来に不安を感じ、安倍政権に対して積極的な支持ではないけれど混乱は嫌だと思っている。政権が代わると大いに混乱しそうだという思いがあるから安倍政権に乗る人が多いんです。

 裏返して言うと、首相官邸は安倍政権の脆弱(ぜいじゃく)さをよくわかっています。例えば日本維新の会との関係に細心の注意を払っているのは、そこに大阪の有権者のかなりの声が反映されていると見ているからです。保守勢力の受け皿があった場合、有権者の関心はすぐに自民党から移ると考えているわけです。

 ちょっと形は違いましたけど、前回の衆院選での小池旋風。あの時も希望の党代表だった小池百合子さんが「排除します」という一言を言わなければ、政権は交代していた可能性があった。官邸はそこをよくわかっているので、詳細かつ綿密な選挙調査に基づき、今回は解散せずに参院選単独でいくと判断しました。

 小選挙区をベースとする以上、きちんとした組織票を持っている政党と組むことが重要です。その能力がある政党は、公明党と共産党の二つしかない。しかも集票能力に関しては、私が見るところ公明党と共産党では4倍くらい違う。権力を奪取するという観点から見ると、自民党は公明党と組むしかシナリオがないわけです。自公の体制で今の小選挙区制度が続いている限り、公明党と組んでいる自民党が崩れる可能性はほぼない。こういう構成になっています。

 立憲民主党は枝野幸男さんによる個人商店です。現時点で権力の奪取を考えていないのは明白です。今回の参院選で国民民主党の息の根を止める。そうすることで、野党勢力の圧倒的なヘゲモニー(覇権)を立憲民主党が握ると考えているのでしょう。

次のページ