■金の値上がりで成功した経験あり
貴金属販売店などでは、オーストリア造幣局発行の「ウィーン金貨ハーモニー」、カナダ王室造幣局発行の「メイプルリーフ金貨」などが販売されている。こうした純度99.99%の金貨なら、のちのち貴金属販売店に買い取ってもらい、現金に換えることも簡単だ。ちなみに若林さんが買っている金貨は「ウィーン金貨ハーモニー」である。
実は若林さん、初めて純金積立をしたのは20年ほど前のことだという。
「過去に純金積立をしていたのは、1990年代後半から2000年代までの15年間。金の価格はまだ1グラムが1000円から1500円くらいだった記憶があります。
それが2000年代の半ばから2000円の大台を超えて値上がりして、私が積み立てた金の価値も数百万円まで膨らんだんですよ。でも、夫が事業に失敗したとき、積み立てた金を全部売ってしまいました。
孫のためにまた純金積立を始めて、今、金の価格が1グラムあたり5000円以上まで値上がりしているのを知って、びっくりしてます。あの事業失敗がなくて、今も持っていたら、ずいぶん儲かったのに……って(笑)。でも、私の純金積立の金(きん)が家のために役立ったわけですし、『これも人生だな』って納得しています」(若林さん)
ところで、孫への金のプレゼントが贈与になるのか、相続になるのかが気になる。
「孫は2歳。誕生日祝いでわが家に来たときに金貨を1枚プレゼントしているんですが、保管しているのは私。20歳になったらまとめて、孫に金貨アルバムごと渡そうと思っています。
孫への教育資金の贈与なら非課税制度があると聞いていますし、多額の相続税が発生するほどの資産はありませんから」(同)
若林さんの願いは、孫の誕生日に一緒に金貨アルバムに金貨を入れる毎年の「行事」が、今後、5歳、10歳、15歳と成長して20歳になるまで続いていくこと。
「猫に小判じゃないですが、孫にはまだ金貨にどんな価値があるのか、もちろんわからないと思います。でも、大人になって、このアルバムに貯まった金貨を見たら、きっと感謝してくれるでしょう?
大学生になった孫に、私からこの金貨アルバムを渡したい。そのためには、まだまだ長生きしなきゃ。孫が成人する18年後まで、『このアルバムを渡すのを楽しみに元気で長生きしよう』という変な充実感がありますね」
と語る若林さん。お孫さんが20歳になる頃には、人手不足や資源の高騰もあり、日本にもインフレ時代が訪れているかもしれない。モノの値段が上がれば、金の価値も上がっていくはず。
そんな淡い期待を持ちながら、若林さんは孫の横でアルバムに入った金貨をニッコリと眺めた。
(取材・文/木村慎一郎、伊藤忍)
※アエラ増刊『AERA with Money 毎月3000円で純金投資』の記事に加筆・再構成