在イギリス保育士でライターのブレイディみかこさんと、イタリア在住のマンガ家のヤマザキマリさん。海外在住の2人から見た日本を語り合った。
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ヤマザキマリ:(ブレイディさんの着ているTシャツを見て)あ、英国のバンドのパブリック・イメージ・リミテッド(PIL)! 私にもパンクな女子高生が出てくる『PIL』(オフィスユーコミックス)という作品があるんです。実は『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)を読み始めた時から、ブレイディさんは私と同じ音楽を聴いてきたタイプの人だって思ったんですよ。
ブレイディみかこ:ヤマザキさんのそのマンガのことは知らなくて。今日このTシャツを着てきたのは、昨日出演したラジオでちょうどPILの曲を流してPILを思い出したからなんです。こんなことってあるんですね。
ヤマザキ:私は高校時代にパンクにはまったことで、変人扱いされていました。
ブレイディ:私は小学校6年生から(笑)。
ヤマザキ:早熟! 私の場合、音楽もですが、ワーキングクラスに惹かれていたんです。
ブレイディ:それ! ワーキングクラスがかっこいいなって。
ヤマザキ:だからこのマンガではワーキングクラスのことをやりたくて、ちり紙交換をする話があります。これは私の実体験の話なんですけど、1日死ぬほど働いて500円にしかならない。でも私はそれをやらないと本当のパンクになれないと思ってたんです。
ブレイディ:これ、これ! 私の基本でもあります。最近の日本を見ていて思うのは海外に対する劣等感が増していませんか。
ヤマザキ:テレビを見ても海外の人がどう日本を見ているかということばかり。
ブレイディ:政治でも他のニュースでも「海外では」がすぐ来るでしょ。あんなの日本だけですよ。誰もそんなに気にしてないですよね。
ヤマザキ:テニスの大坂なおみさんやNBAの八村塁さんの報道も「日本人で初めて」ってやるじゃないですか。日本が海外に認められたという報道を朝から全国ニュースでやる国はそんなにないですよ。イタリアでもアメリカでも自国の選手の活躍ネタを朝一番のメインニュースで扱っているのを見たことないです。