「痛ましい」としか言いようがない交通事故が相次いで起きている。その中でも特に交差点では多発しており、対向車や右折先を通行する歩行者など、見るべきものが多い「右折時」が危険だ。交通事故をなくすにはどうすれば……待ったなしの、交通事故防止を考えた。
【危ない交差点ランキング】都市部で事故が多発する交差点がこちら
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毎年のように事故が多発する交差点もわかっている。一般社団法人「日本損害保険協会」が、07~16年の過去10年間に都道府県別ワースト5に5回以上入った交差点を「“常連交差点”リスト」として公開している。その数、全国に91カ所。
愛媛県松山市の「天山(あまやま)交差点」は超常連交差点の一つ。10年続けて、都道府県別ワースト5にランクインした。松山市中心部と松山自動車道の松山ICを結ぶ国道33号と、松山環状線が交差する十字路。16年には追突事故が5件、右折時の事故が3件起きた。道路を管理する松山河川国道事務所によれば、ドライバーに注意を促すLED標識の設置や、見通しをよくするため高い木を伐採するなど対策を打っているという。
一方、地域特有とされる交差点内での危険な運転も問題視されている。
「松本走りが根付いているなら残念。直していかなければ」
5月、長野県松本市の菅谷昭市長は定例記者会見で大津市の死傷事故に触れ、こう言った。「松本走り」とは、直進している対向車が接近中なのに強引に右折する、松本市内でよく見られる運転法。市によれば、言葉が広まったのは10年以上前から。
「松本市は城下町だったため道幅が狭く右折レーンがない道路も少なくない。後続車に迷惑をかけないよう早く右折するようになったのではないかと思います」(市の交通安全・都市交通課)
だが、自己中心的で強引な運転は深刻な事故を招く。18年に松本市内では右折事故が73件起き、そのうち「松本走り」が当てはまる交差点内での右折直進事故は44件あった。
他にも、交差点内での危険な運転は「山梨ルール」(山梨県)、「茨城ダッシュ」(茨城県)、「伊予の早曲がり」(愛媛県)などと呼ばれ、各地で危険視されながら撲滅できないでいる。
交差点内での交通事故を減らすにはどうすればいいか。元警察庁科学警察研究所で交通事故の鑑定や分析を担当していた山梨大学大学院の伊藤安海(やすみ)教授(安全医工学)は、まずはハード面での対策を行うことが重要と語る。