1日午前、東京駅の新幹線ホームに笑顔で姿を見せた雅子さま。まず目を引いたのは、雅子さまが身につけていたパンツスーツだ。淡いグレーの生地で、ジャケットには白い太めの縁取りをほどこし、さわやかな印象。上皇后美智子さまをはじめとする女性皇族方は、被災地へのお見舞いなど一部の公務を除き、スカート姿が多い。その中で、雅子さまは皇太子妃時代から度々パンツスーツを選んでいた。

 1日夜には、宿泊先のホテルでレセプションが開かれ、植樹祭の関係者約500人が一堂に会した。雅子さまは光沢感のあるエレガントなスカートのスーツ姿。記者たちを驚かせたのは、乾杯の後、両陛下がひしめき合う出席者の間に入っていき、次々と懇談を始めたことだ。植樹祭のレセプションはこれまで、ホール上座の金びょうぶの前で天皇陛下と皇后さまが並び、懇談をする人が列を作って言葉を交わす形式だった。

 宮内庁によれば、今回の「新方式」は皇太子時代に出席していた「全国育樹祭」のレセプション方式を参考にしたものという。雅子さまはかつて、療養中のために「多くの人が列立する行事は負担が重い」と医師から止められていた時期があった。今回の新方式を笑顔でこなす様子に、雅子さまは着実に回復していると実感した。

 視察先では、予定にはない「声掛け」もあった。冒頭の医療療育センターの玄関脇では、天皇陛下が声をかけた男の子の指をぎゅっと握ったり、雅子さまが車いすの女性の手を両手で包み込んだり。案内した越知信彦センター長は言う。

「両陛下は、まるで既知の間柄のように、親しく、丁寧にお話をされていた。これからもこういったスタイルでさまざまな行事に臨まれるのだなと思いました」

(朝日新聞社会部・中田絢子)

AERA 2019年6月17日号