濃厚な接待で米国の言いなり、と日本で批判が出ているトランプ米大統領の訪日。米メディアも訪日前から「おもてなし外交」を槍玉にあげていた。
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「安倍首相ほどトランプ大統領を喜ばすのに腐心した国家首脳は、他にはいなかったのではないか」
という書き出しの米紙ワシントン・ポストの記事が出たのは、5月23日(米東部時間)。トランプ氏が日本を訪問する直前のことだ。トランプ氏の3泊4日の訪日前に今回の予定を皮肉っていた。
「安倍首相、おべっかの積み上げ 結果はいかに?」
と書いたのは、米紙ニューヨーク・タイムズ。こちらも訪日直前の24日付(同)でワシントン発の記事を掲載した。写真は、4月に安倍首相がワシントンを訪問した際のもので、親密ぶりを報じた。
通常、日米首脳会談や国賓級の訪日でも、米国の新聞が事前に原稿を書くことは極めてまれだ。安定した同盟関係であるからニュースではない、というのが背景にある。だが、今回は2紙ともホワイトハウス担当記者の署名で、大相撲観戦などの異例な接待ぶりを批判した。米紙にとってはそれこそ“異例”の扱いだ。
ワシントン・ポストは、
「日本のリーダーは、最も大切な同盟関係を維持するためなら、やれることは何でもやるとまでみられている」
と指摘する。
ニューヨーク・タイムズは、
「米中貿易戦争のあおりを日本が受ける可能性や、北朝鮮のミサイル問題など、課題が山積みである」
としたうえで、安倍首相がトランプ氏に、4日間にわたる「おもてなし攻勢」の予定を組んだと解説。大相撲観戦の際の「トランプ杯」や、新天皇による晩餐会は「お金では買えない」もてなしぶりだと呆れた様子で伝えた。
さらに、同紙は山口二郎・法政大学教授のコメントを引用している。
「安倍首相は外交活動の観点では、何の成果や結果も得ていない。(おもてなしは)安倍首相の外交での失敗を隠す、表面的な政治ショーだ」
訪日後に出たAP通信の記事も、やはり安倍首相の「おもてなし外交」を一蹴している。両首脳の記者会見で、北朝鮮のミサイル問題に絡み、「気にしていない」(トランプ氏)、「極めて遺憾」(安倍首相)と意見が「対立」(同通信)したことを指摘したうえで、
「この食い違いは、安倍首相が国益を引き出すために、トランプ氏に親切心を浴びせかけている長期的戦略に限界があることを明らかにしている」
と、身も蓋もない。