メンタル不調は気づくのが遅れ、適切な対処ができないと重症化することもある。自分も周囲も「予兆」を見逃さないためにどうしたらいいのか。
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精神科医の三宅永さんは多くの人が抱く「月曜の不調」について、克服するコツがあると言う。
「月曜日は、月曜病、サザエさん症候群という言葉もあるくらい、誰しも気が重いものです。ただ、『土日に気分転換』という考えがそもそも間違い。日曜日を一日中楽しく遊んだら、ギャップで月曜の朝がつらいのは当然です」
三宅さんが患者に対してよくアドバイスするのは、「土曜日はぱっと遊んで、日曜日はもう、仕事モードにしよう」ということだ。日曜日には、これから1週間の段取りを考える、自分に足りない部分の勉強をするなど仕事モードにしたほうがいいという。ますますうつになりそうと思うなかれ。そのほうが日曜日と月曜日のギャップが少なくなり、1週間がスムーズに進み、長期的に見てもうまくいくという。
「日曜日は仕事の前の日、と割り切ったほうが、かえってラクなんです」(三宅さん)
「6月病」は正式な医療用語ではないが、この言葉が広く周知されることには、医療の専門家としても大きな意味を感じる、と言うのは精神科医の勝久寿さんだ。
「適応障害である5月病の場合は、比較的抵抗なくすぐに精神科を受診する人が多いのですが、うつ病の方は食欲低下などの身体的症状があることから、まず内科を受診する人が多く、精神科の専門医受診に行き着くまでに時間がかかるケースが多い。おそらく受診は7月頃にまでずれこんでいるのでは。6月病という言葉を意識することで、6月の段階でうつ病の予兆に注意を払うことができれば」
自身や周囲の人の予兆に気づいたら、早めの受診が鉄則。ただ病院選びにも注意が必要だ。
「医師が複数いたとしても、自分の主治医がしっかりと決まる病院にしてほしい。一人の医師に継続的に診てもらうことが大事です。また、その病院のホームページから医師の人柄や、どういう考えで治療しているかがよく見えることも重要。そして、何でも聞いてくれる医師じゃないとダメ。『それは関係ないからいいよ』など話を遮るような医師はよくない。初診のときに『ああ、ちゃんと話を聞いてもらえたな』と思えるか。その最初の印象は大事ですね」(勝さん)
病院のホームページなどで医師の経歴をチェックする際には、着目してほしい点があるというのは三宅さん。
「どこかの病院の精神科なり心療内科で、きちんと何年間か経験を積んでいるかどうかを確認することは、絶対に大事です。
また、会社に産業医がいれば、地域の医師の情報を聞くのもいい。会社の健康管理室にいる保健師さんも情報を持っている。結局、そういう口コミがいちばん、信憑性が高いんです」
早め早めの対策で、「6月病リスク」を乗り切りたい。(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2019年6月3日号より抜粋