俳優・佐藤二朗さん
俳優・佐藤二朗さん
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 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は小さいものへの憧れについて。

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昔、舞台で死体をやりまして。

正確には、斬られて絶命し、暗転までその場で倒れておりました。

その時の演出家にこう言われました。

「うーん、二朗ね、邪魔。なぁんか、邪魔。二朗がそこに倒れてるとね、なぁんか邪魔」

邪魔と言われましても、そこで斬られて絶命し、その場に倒れこむ、という演出だから仕方ないわけですが、要するに、なんでしょうね、体積? 僕の体の、体積みたいなものが大きくて、他の人より邪魔に感じる、みたいなことだったと思います。なんか、大きな鯨(くじら)がデーンと、ドデーンと、そこに横たわってるようだと。

そうなんです。僕、すべてにおいて大きいんです。

まずは顔。肩の高さは僕の方が低いのに、顔の大きさにより身長では逆転する、という怪奇現象(?)も度々あるほどです。そんな大顔面にも関わらず、ある朝、「うわっビックリした! 君、目、細いね」と妻に驚かれるような目細なものですから、そら壁のような顔になるわけです。そしてなぜに妻が唐突にその朝ビックリしたかはいまだに謎です。

さらに手。たとえば僕の小指は、平均的な女性の中指より長い。そう言いながら何人かの女優さんの手を握ることに成功しております(あの、冗談ですからね。あ、でも指の長さは冗談ではなく、本当にそれくらい手が大きいのです)。

さらに言わずと知れた、足。僕の足の大きさは31センチ(メーカーによって多少は前後します)。僕の靴は、靴というより、ほぼ小舟。

かようにいろいろ大きい理由として思い当たるのはやはり、生まれた時の体重です。僕、4250グラムだったんです。母親もさぞ苦労して生んだことでしょう。母親いわく、その時の看護師さんが「お肉ちゃん」と言っていたそうです。

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小さいものへの憧れ 小皿に細麺に…