当時の注文は、各座席のインターホンから「イクラをお願いしま~す」と注文していました。注文を受けると厨房でイクラを数皿作って流すのですが、注文した席に行きつくまでに川上のお客さんが取ってしまうこともよくあり、いつまで待っても注文したイクラが流れてこないということも頻繁にありました。当時は、座る座席によって有利・不利があったんです。

 そんな中登場した画期的な注文システムが、2000年代初めに導入が進んだ、「タッチパネル」と「オーダー専用レーン」の組み合わせです。これにより、注文したメニューが、注文した人のところに確実に届けられるようになりました。

 好きなお寿司を確実に注文できるようになると、レーンを流れるお寿司を取る人が減ってしまうのは自然な流れ。マルハニチロの調査(2019年3月)によると、なんと約74%もの人が、レーンを流れてくるお寿司を食べるのではなくタッチパネルで注文するそうです。タッチパネルは、2002年に当社が他社に先駆けて導入したんですが、業界としては考えさせられる数字ですね。

「タッチパネル派」のお客様には「食べたいネタが回ってくるのを待つより、注文して早く食べたい!」という理由が多いようです。特に女性では8割以上の方が「タッチパネル派」とのこと。女性のほうがせっかちな方が多いんでしょうか? そのほか、「お寿司がむき出しで回っているのを食べるのは、何となくイヤ」という方も結構いるようです。

 一般的には「タッチパネル派」が優勢ですが、実は当社のお店では、「タッチパネル派」と「レーン派」の割合がほぼ拮抗しているんです。

 当社では2011年から、回っているお寿司を空気中のほこりやばい菌などから守る、ポリカーボネート製の透明なカバー、「鮮度くん」を全店舗で導入しています。これが「レーン派」の方が多い理由のひとつとなっています。

 電池等を使わず、ワンタッチでお寿司を出し入れできる仕組みを開発・導入するのには、長い年月と多大な投資が必要でしたが、お客さまが安心してお寿司を召し上がっていただけるようにと、関係者が苦労して完成させたものです。

 次回は回転寿司店のメニューに起きた革命と、ITやAI(人工知能)の導入についてお話ししましょう。

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◯岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、18年12月から「くら寿司株式会社」広報担当

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