

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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野球のイチロー選手が現役引退を発表し、1カ月が経ちました。その間も、国民栄誉賞を辞退した話が出たりと、まだまだ世間の関心は高いです。
「はかりはあくまでも自分の中にある」とイチロー選手は言いました。自分の限界を一つずつ超えるために、人知れず努力を積み重ねる。誰もが彼のようなスーパーヒーローにはなれないけれど、自分と向き合うことは誰にでもできます。
あれだけの人ですから、想像を絶する苦しみもあったでしょう。成功の裏側で、重圧などを感じることもあったかもしれません。イチロー選手を追いかけたドキュメンタリー番組では、孤独を感じていることも吐露していました。けれど、番組で行きつけの店で出会った人と練習するシーンを見て感じたのは、イチロー選手は孤独かもしれないが、孤立はしていないということです。これは随分、意味が違います。
ローソンのオーナーさんたちも、実は孤独と闘っています。明日雨が降れば、お客さんが来ないかもしれない。シフトが回らなかったらどうしよう。責任も大きく、不安を持ちながら働いています。経営者は私も含め、みな孤独です。だからといって、孤立してはいけない。
困ったり、間違えそうになったりしたときに助け合えるよう、ローソンでは加盟店オーナーのみなさんと様々な会合を実施しています。本部とフラットに話ができると好評で、今後も続けていくつもりです。
孤独で孤立していると、心身ともに疲れてしまいます。私自身、そうした状況で社長が務まるかと考えると、なかなかに厳しいものがあります。自分と向き合いながらも、仲間と一緒に役割分担して目標に向かっていく。イチロー選手を見ていて、改めてその大切さを感じました。
※AERA 2019年4月22日号