大きな違いは、「駅力」「街のブランド力」だ。前者の最寄りの大宮駅はJR京浜東北線や埼京線など六つの路線を使える利便性により評判は悪くないが、都心回帰が進む中、埼玉の物件で駅から遠いとなるとニーズが落ちる。一方、東京23区内でしかも好イメージの世田谷区の物件は値崩れしにくいのだ。

 実際に新築マンションを日本全国に供給している不動産総合ディベロッパーは「負」と「富」の境界線をどう見ているのか。首都圏中心に「レーベン」「ネベル」ブランドの新築マンションを供給するタカラレーベン代表取締役社長の島田和一さんは言う。

「端的に言うなら、駅から徒歩何分かという分数格差。歩いて5分なのか、10分なのかという差でも、将来の価格は変わります。立地に関しては昔から言われていることですが、昨今は“1分でも近く”という風潮が強いようです。快速が止まるか止まらないか、といった駅力も負と富を分ける境界線になります」

 新たに買う場合には、「負動産にならないポイント」に気をつければいいが、自分が住んでいる家や、すでに負動産になっている実家を、富動産に変える方法はあるのだろうか。

 売る前にリフォームして内装だけでも新しくすれば、富動産として売れるのでは、と考えがちだが、実は、次に新しく住む人が自由に設計変更できたほうが、売れやすいようだ。つまり「リフォームが必要な分、値段を下げて売る」ほうが、買い手がつきやすい。特に、将来負動産になるリスクがあるなら、不動産会社の仲介による売却ができるのであれば、叩き売り価格になってしまっても売ったほうがいい。仲介が無理なら、買い取り事業者に安く買い上げてもらうことも検討する。

 現在、不動産価格はバブル状態と言えるほどに上昇している。それでも、買われる物件はすぐに売れてしまう。この理由は買い手のニーズやライフスタイルの変化も関わっているという。

「共働き世帯の増加、高齢シニア層の住み替えニーズ、晩婚化によるシングル世帯の増加等。これらが『多少高くても、立地価値の高いものが売れる』要因だと思います」(前出の島田さん)

 価格が下がるのを待ってから買おうという発想は通用しない。たとえ、不動産購入時に500万円安かったとしても、将来、売却時に、1千万円、2千万円と下がってしまえば意味がない。だからこそ、不動産を選ぶときは、何年たっても買い手がつく富動産かを見極めることが大切なのだ。(経済ジャーナリスト・安住拓哉、編集部・中島晶子)

AERA 2019年4月22日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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