必要な視力を人工的に生み出した国際プロジェクトが、日米欧など計13の研究機関、日本人22人を含む200人以上が参加した「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」だ。チリや米ハワイ、南極など世界6カ所、計八つの電波望遠鏡を連動させることで実質的に地球とほぼ同じ大きさの望遠鏡をつくり「視力300万」を実現。2017年4月に数日間観測し、2年間の画像解析や処理を経て今回の発表となった。

 新たに手にした眼でブラックホールにたどり着いた様子を、国立天文台の秦(はた)和弘助教が会見で描写した。

「M87は、銀河全体の光度をしのぐようなとてつもない輝きを銀河の中心部の狭い流域だけで出している。この明るい所を深く深く掘り下げていったら、最後に真ん中に穴が開いていた」

 EHTでは、太陽系が属する天の川銀河の中心にある「いて座A*(エースター)」のブラックホールも同時観測しており、画像を解析中だ。今後2年で三つの望遠鏡を追加し「視力450万」を確立することで、より高画質、高解像度の撮影を計画。こうした観測を通じ、ブラックホールの生成メカニズムや周辺ガスの運動などの解明に迫る。前出の本間教授が語る。

「ブラックホールを黒い穴として見極めることができる視力を得たからこそ、初めて写真を見ることができた。ブラックホールを詳細に解き明かすツールを手にしたわけで、新しい時代の始まりだと思っている」

(朝日新聞GLOBE編集部・山本大輔)

AERA 2019年4月22日号

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