先月、都内の病院で人工透析を中止したことで女性が亡くなっていたことが発覚した。背景には透析治療の過酷さもある。腎不全は移植治療もできるが、あまり普及していない。
【「人工透析」だけが治療ではない 腎不全末期の治療の選択肢はこちら】
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老廃物の排泄、血圧や電解質の調整などを担う腎臓。その機能が低下する慢性腎臓病の国内患者数は1330万人にものぼり、高齢化に伴ってその数は増加の一途をたどっている。近年では糖尿病など生活習慣病を起因とするケースも増加。誰にとっても他人事ではない疾患だ。
その慢性腎臓病が進んだ末期の腎不全の治療法としてよく知られるのが「人工透析」だ。週3回ほど通院し、1回およそ4~6時間かけて血液をろ過する透析は、「社会生活は送れる」と言われるものの、負担は小さくない。
都内の病院で透析を中止して女性が亡くなっていたことが先月に発覚したケースでは、病院の対応が適切だったかはまだ結論が出ていないが、女性も透析を拒否していたことがわかっている。それほど患者負担の大きい透析だが、もう一つの選択肢の「移植」はあまり普及していない。
「健常な腎機能を根本から取り戻せる移植治療を受けると、患者のQOLは確実に高くなる。しかし、その選択肢を誰でも選べることを知って治療に臨む人は、ごく一部に限られている」
そう語るのは、600件以上の腎移植に携わってきた九州大学病院の加来啓三医師だ。移植というと「費用が高額」「手術の負担が大きく入院期間が長い」「手術までの待機期間が長い」といった印象があるが、すでに“古い常識”に変わっている。
費用に関しては、食費や差額ベッド代など一部を除いて保険適応となり、かつ自立支援医療制度など各種助成により患者の自己負担は数万円程度で収まる。
治療期間については、九大病院では腎移植を受ける手術は3時間程度で終了し、入院期間は10日ほど。手術の2日後には歩行練習が始まり、「体力回復期間を含めても1~2カ月で仕事復帰する人が多い」(加来医師)。腎臓が機能を取り戻すため、透析治療にはつきものの食事や旅行の制限もほぼなくなる。