各地で深刻化する空き家問題と不動産業の法律改正に伴い、空き家を収益物件化しようという動きが見られる。参入したベンチャー企業の現状を追った。
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総務省が13年に行った住宅・土地統計調査では、国内の空き家数は約820万戸。18年6月の野村総研のリポートでは、33年には1955万戸に達し、全体の約27・3%が空き家になると予測している。
そんな中、増え続ける空き家をクラウドファンディングを使って収益物件化しようと試みる企業が現れている。17年12月に「不動産特定共同事業法」が改正され、企業が参入しやすくなったことが背景にある。同法に詳しい敬和綜合法律事務所の河本秀介弁護士はこう語る。
「主な改正点は二つです。まずは、許認可の緩和。これまでは出資者が配当を受け取るような不動産事業を行う際には、主務官庁の『許可』が必要でしたが、小規模案件を扱う場合に限り、簡易な『登録』だけで通るようになった。これにより、資本金が少ない宅建事業者でも、事業が行えるようになり、空き家など地域の小規模物件にも対象が広がった」
「もう一つは『ペーパーレス化』。これまで投資家への説明や報告は紙ベースで行うことが必須でした。これだと、小口で数万人から出資を募るような事業ではペイできない。投資家とのやりとりを全てインターネットで行えるようにしたことで、小口で多くの出資を募るクラウドファンディングが活用しやすくなったのです」
とはいえ、クラウドファンディングで空き家を収益化させるには、一定のノウハウが必要だ。河本弁護士によると、事業に乗り出したのは金融、不動産系のベンチャー企業が多いという。
東京都渋谷区の不動産テック会社「ファンタステクノロジー」もその一つ。10年に創業した同社は、AIやITを活用し、都心の高利回り物件を多数提供して成長してきた。
今年2月に募集したクラウドファンディング型の投資ファンドは、戸建ての空き家再生やマンションのリノベーションなど5案件、総額約7千万円の募集が約1分で終了となり、業界から注目を浴びた。社長の國師康平さんは、「空き家再生事業が占める割合はまだ小さい」と言いつつ、こう語る。