Bさん:そうですか。まだお酒は完全にやめなくてもいいですよね。最近、プリン体ゼロの発泡酒にしてるんですよ。

医師:あ、いや、ビールだけ変えても……。プリン体はうまみ成分に含まれていて、血液中の尿酸が増えすぎると、溶けきれない分が結晶になって血管や関節に悪さをします。でも、発泡酒だろうが焼酎だろうが、アルコールには、尿酸の排出を抑える作用があるので、どんなお酒も痛風にはよくありません。ビールだけ気をつければよいと皆さん誤解されているようですね。

Bさん:そうだったんですか。プリン体ゼロ、糖質ゼロのお酒にはそんな作用がないものと、ネットの記事を読んでいて思ったんですが、そうではない、ということですね。

【このときの医師の気持ち】

 インターネットに書いてある情報は、本当に玉石混交で、全部が嘘とは言わないけれど、偏った内容も多いし、すべての人に同じように当てはまるわけではない。根拠が十分示されていなかったり、実は広告で特定の商品に誘導していたり、読む人の目を引いて信用させるよう、さまざまな工夫が施されている。

 Bさんも最初はネットで調べたことだけを根拠に自己診断しようとしていた。でも尿酸の特性や痛風との関係を少し説明しただけで、不特定多数の人向けの情報より、これまでの健康状態を知っている目の前の医師のほうに気持ちを向けてくれている。

 尿酸値が上がって痛風の発作が出て、仕事の妨げとなっては困る、という気持ちから受診前に自分で調べようとしたBさん、それだけ真剣に自分の健康を取り戻そうとしている。Bさんが調べてきたことをすべて否定するのではなく、Bさんに当てはまることと、そうではないことを丁寧に説明して、納得してもらい、これから注意すべきことを一緒に考えることにしよう。

【解説】

 どんなにインターネットで医療情報を入手することができるようになっても、患者と医師との役割が根本的に変わることはありません。医療の専門性が高いことについては医師にまかせて、患者は自分でできること、しなくてはいけないことに集中する役割力が重要です。

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