竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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デジタルサイネージの実験では、ローソンのあきこちゃんも登場しています
デジタルサイネージの実験では、ローソンのあきこちゃんも登場しています

「コンビニ百里の道をゆく」は、49歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

【写真】デジタルサイネージの実験では、ローソンのあきこちゃんも登場

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 コンビニのお客さまは、例えば「シャケおにぎりが食べたい」と思って来店されたとしても、おにぎり一つだけを買って帰られることはまれです。隣に陳列してあったから揚げも買おうとか、食後のデザートも1品追加しようとか、何かしらの「衝動買い」をされる方が大半です。

 それぞれの店舗では、なるべく多くの商品に興味を持って頂けるよう、これまでは経験や勘で陳列や商品の見せ方を工夫してきました。

 経験や勘に頼ってきたことを、デジタルを使って客観的なデータとして集められないか? ローソンでは先日、店舗で商品に電子タグを取りつけて実験を行いました。電子タグと商品棚につけたカメラを使用することで、お客さまの購買行動を見るというものです。

 値札は小さいものより大きいほうに手が伸びやすいのではないか。ある商品を手に取ったお客さまに、デジタルサイネージ(電子広告)で別の商品を見せると購買は変化するのではないか、といった仮説をデータ化する作業を進めています。

 アナログでも、各店舗ではお客さまに興味を持って頂く商品陳列の仕方を常に研究しています。

 たとえば「突き出し陳列」といって、通路に少しはみ出すようにカゴなどに入れた商品を並べると、動線が一度止まるので「おっ」と目につきやすい。

 また、商品を整理せず、無造作に什器に入れる「ジャンブル陳列」をすると、何があるのか探してみたくなる効果があると言われます。

 カゴを手に取って頂いた方が購買点数が多くなる傾向があるので、どの時間帯にどこにカゴを置くのか、ということも重要です。培ってきたこうした傾向を、データ化することで精度を上げていきたいと考えています。

 データを正しく収集、分析できれば、お客さまに「あれも買いたい」と思って頂ける、魅力的なお店作りの一助となるはずです。

AERA 2019年3月18日号