埼玉県への徹底的な“ディスり”で話題の映画「翔んで埼玉」。キャスティングや演技指導などついて、原作者・魔夜峰央さんと監督・武内英樹さんが語る。
【「翔んで埼玉」場面写真】二階堂ふみが全力で“ディスり”顔を見せるシーンに注目!
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魔夜峰央:「翔んで埼玉」は発表当時は全く反響がなく、自分でも忘れているような作品でした。それが復刊してからあっという間に大ヒット。誰よりも作者自身が一番驚いています。なぜ今なのかと。
武内英樹:書店で原作を見つけた時、今しかない!と思いましたよ。
魔夜:映画化の話を聞いた時も正気か?と。おやりになるならお任せしますと、丸投げです。
武内:内容が内容だけに、いかに誰も傷つけずに笑ってもらうかを考えました。中途半端だとかえって傷つけてしまう。設定から衣装、キャスティングにいたるまで極端に振り切ってリアリティーから離れていくのが一番大事だと思いました。
魔夜:麻実麗役がGACKTさんと聞いて驚きました。でも、すぐにありだな、と思った。
武内:役者さんにはふざけないで大真面目にやってほしい、大河ドラマだと思ってほしいと伝えました。うまい役者さんが忠実に演じるのでギャップが面白い。あまりにも上手で熱量があるので、虚構のなかに徐々に感情移入してしまうという不思議な現象を起こしたかったですね。
魔夜:通行人で出させてと言ったら、オープニングで私の両脇に妻と娘、センターではバレエダンサーの息子が踊り、家族総出の出演になりました(笑)。
武内:極端に振り切った方が絵空事として見えるということを理解した頃からスタッフが面白がりはじめて、美術もサザエにアンテナをつけて「こんなの作ってみました!」と用意してくれたり。毎日が文化祭のような、雰囲気のいい現場でしたね。
魔夜:千葉解放戦線を登場させるなど、短い原作をこれだけよく発展させたなと感心しました。
武内:私は千葉県民なので、原作を読んだ時に埼玉ばかりいじられているのが悔しかったんです。千葉と埼玉は昔からライバル。お互い住みやすい県になった今の時代なら、いじりあっても笑って許してもらえるかなと(笑)。お互いのライバル心をくすぐりつつ、仲良くなれるとロマンチックですよね。ロケハンや撮影を通して埼玉はいいところだと知りました。埼玉県民のお客さんに、笑いながら泣いてもらえると嬉しい。千葉県民としてエールを送ります。
(編集部・小柳暁子)
※AERA 2019年3月11日号