今回の米朝首脳会談に向けた大きな変化は、もう一つある。朝鮮半島情勢に精通している南山大学の平岩俊司教授(現代朝鮮論)が説明する。


「昨年6月にあった初の米朝首脳会談と、今回の2回目の会談の決定的な違いは、韓国の関わり方です。韓国は、昨年6月と比べると、かなり積極的に会談の中身に関わろうとしている」

 米朝首脳会談を控え、米韓首脳は2月19日、電話で協議した。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が強調したのが、「韓国の役割の活用」だった。

 平岩教授が解説する。

「米国が譲歩せずに北朝鮮を動かしたいなら韓国を使え、ということです。同じ民族間での交流は、人道的な理屈でもできるというのが韓国側の立場。北朝鮮を動かすために、韓国をカードとして使えというのがポイント。非核化で進展がなければ北朝鮮への経済制裁は解除しないと言っている米国に、韓国と北朝鮮の南北間の事業については特例扱いすることを求めている」

 具体的には、開城工業団地と金剛山観光、南北の鉄道連結と道路連結の四つの事業を念頭においている。韓国にとって米朝交渉の中身に関与できるのは国益になるし、南北関係の改善にも寄与するため一石二鳥だ。北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)の核施設の査察を認めるなどすれば、米国が求める完全非核化へ向けた象徴的な入り口としての演出にはなる。

 果たしてトランプ政権が韓国の戦略にのってくるかどうかは不透明で、そこも今回の米朝首脳会談の注目点の一つになる。

 一方のトランプ大統領は2月初めの一般教書演説で、偉大な国は戦争をしないと強調した。非核化よりも朝鮮半島で紛争が再発しなかったことへの評価を求めるもので、手っ取り早い外交成果としての「終戦」や「平和」に焦点を移したように見えると、平岩教授は話す。

「北朝鮮が言う非核化は、すでに持っているものを前提にはしていないように見える。所持しているものも含め、どのタイミングで手放すのかなど、非核化の工程表が明示されないと、とても成功とは言えない。ただ、残念ながら、米韓ともにハードルを下げ、なんとなく低いところでの合意で、成功に見せかけようとしている印象がある」

 初回と異なり、会うだけでは評価されない2回目の米朝首脳会談。3回目への単なる「つなぎ会談」ではなく、わずかでも前進と認められる成果が出ることを期待したい。(アエラ編集部・山本大輔)

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