厚労省の担当者が小豆川さんに送ったメール。〈人員が限られている中、他業務との兼ね合いもあります〉とも書かれている(小豆川勝見さん提供)
厚労省の担当者が小豆川さんに送ったメール。〈人員が限られている中、他業務との兼ね合いもあります〉とも書かれている(小豆川勝見さん提供)
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 厚生労働省が公表した食品の放射線量の測定値に誤りがあると東大助教が指摘した。だが、ずさんな扱いをされたデータが2カ月近く放置され、風評被害にもつながっている。

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 毎月勤労統計の不正調査問題に続き厚生労働省のずさんなデータの取り扱いが発覚した。食品中の放射性物質の検査結果だ。

「偽装というより、想像力の欠如に起因するもの。偽装というと『悪いことを良いように見せかける』という意味が強いと思いますが、今回はその逆。しかも結果がどう伝わるか、想像できていない」

 こう指摘するのは、東京大学大学院助教の小豆川勝見(しょうずがわ・かつみ)さん(環境分析化学)だ。

 厚労省は2011年の東京電力福島第一原発事故以降、全国の自治体で実施された食品中の放射性物質の検査結果をまとめ、検索サイト「食品中の放射性物質検査データ」で公開している。だが、表示される数値に間違いがあるという。

 食品に含まれる放射能の測定を行う小豆川さんは、自分たちの結果と比較するためのデータを探している。厚労省のデータベースはその一つ。そこに昨年9月、おかしいと感じる結果を発見した。明らかに飛び抜けて高い数値の食品があったのだ。

 厚労省は自治体から報告される食品の放射線量の数値を転記し、随時更新している。セシウム134、セシウム137、両者の合計だ。ゼロではないが、使った機器では検出できないほど少ない、つまり検出限界未満であれば、不等号記号「<」を入れて表示する。例えばある産地の鶏卵は、実際にはセシウム134が「<9.1」で、1キロあたり9.1ベクレル未満、セシウム137が「<8.1」で同8.1ベクレル未満。ともに検出限界未満だった。しかし、

「不等号が抜けたまま合算したり、合算値に不等号を入れなかった結果、本来は存在しないはずの線量の放射能が存在していたことになった」(小豆川さん)

 何らかの理由で「<」を抜かしたことで、この鶏卵のセシウムの合計値は「17」になった。政府は基準値を一般食品で同100ベクレル、飲料水で同10ベクレルなどと定めている。それを下回ってはいるものの、ほとんどの検査結果が検出限界未満であることを考えると、衝撃的な水準だ。

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