鶏卵以外にシイタケ、トマト、ニンジン、飲料水でも同様に違和感がある数値が厚労省のホームページにアップされているのを小豆川さんは確認している。
より大きな問題は、この先だ。この誤りを、小豆川さんは昨年9月に初めて厚労省食品監視安全課の担当者に指摘。12月21日には、担当者が過ちを認め、<修正データへの更新を急ぎます>と返信してきた。だが、それから2カ月近く経ってもデータは修正されなかった。小豆川さんによれば、指摘箇所を直すだけなら1時間もかからないという。
早くから厚労省のミスではないかと指摘していた市民放射能測定所「東林間測定室」(相模原市)の高岡章夫さん(62)は厚労省に電話して驚いた。担当職員が「数値は基準値の100ベクレル以下だから問題ない」と答えたというのだ。
厚労省のデータベースは、このカテゴリーでは日本最大級。研究者だけでなく、広く市民も利用する。市民団体が開催した講演で情報ソースとして使われ、さらにSNSで「○○県産××に汚染が出た」などと拡散されたことで、風評被害が起きてしまったと思われる例もある。
厚労省は20年の東京五輪・パラリンピックに向け国内外に食の安全をアピールしている。先の小豆川さんは厳しく批判する。
「誤記による実害を詳細に測ることはできませんが、食の安全をうたう役所の責任は重い」
2月14日に本誌が事実関係の確認を求めると、厚労省は翌15日午前、誤りのあった四つの数値を修正。2カ月近く誤記を放置した理由をこう回答した。
「新規に報告されたデータがたまっており、その確認・公表作業を優先したため、データ修正が遅れてしまいました」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2019年2月25日号