老若男女問わず猛威を振るう花粉症だが、発症時期の低年齢化が進んでいる。背景に何があるのか。
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昨年3月の月曜日の朝。寝室から出てきた記者の長男(当時3歳)の目が赤く腫れていた。まぶただけでなく、目の下の部分も膨れ上がって人相が変わってしまっている。「かゆい」と言って何度も指で目をこすり、腫れもかゆみもますます強まっていく。鼻水も止まらない。
かかりつけの病院へ連れていくと、主治医は「おそらく花粉症による、アレルギー反応でしょう」と言った。
えーっ、花粉症?? まだ3歳なのに……。
振り返ると、土曜日は満開の梅を見に近くの公園へ。日曜日は別の公園で朝から遊び、お昼ごはんはレジャーシートを広げてピクニック気分を楽しんだ。そういえば、お弁当箱やコップが飛ばされてしまうほど風が強かった。花粉情報を確認すると、土日とも大量に飛散していたようだ。でも、こんなに小さい子でも発症するものなの?
「早ければ2歳で発症する子はいます」
と言うのは日本小児アレルギー学会理事長で国立病院機構三重病院院長の藤澤隆夫医師だ。
子どもが1歳前後で歩き始めると外で遊ぶ時間も増えるが、もし1歳の春にスギ花粉が鼻から入り、体の中にアレルギーを起こすIgE抗体がつくられると、翌年の春には花粉症を発症する子どももいるという。
花粉症は、コップに徐々に花粉がたまっていき、あふれだした瞬間、花粉症を発症するという「コップ理論」で説明されることがある。2、3歳で発症するとは、たった1、2年で花粉があふれてしまったということなのだろうか。
国立成育医療研究センターのアレルギー研究室室長の森田英明医師は「それは誤解です」と指摘し、こう説明する。
「花粉そのものがたまっていくのではなく、花粉を異物とみなしたときにつくられるIgE抗体がたまっていくイメージのほうが正しいと思います」
発症時期の違いは、コップの大きさではなく、蛇口の勢いの違いで説明できる。水道からジャージャーと勢いよく水が出るようにどんどん抗体がつくられる人は、わずか数回の春を経験しただけで発症することもあるという。
発症の低年齢化が進む原因は何か。藤澤医師は言う。