日本代表が惜しくも準優勝に終わったサッカーのアジアカップ。ロシアでのワールドカップ(W杯)以降、メンバーを大幅に入れ替えた若きサムライブルーの活躍が日本国内を熱くした一方、観客が試合を暴力的に妨害するなど、アラブ諸国内の深刻な政治対立が持ち込まれる荒れた大会にもなった。カタールで開催される2022年のW杯は大丈夫だろうか。大きな不安と懸念を残す大会になった。
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「どんな愚行(stupid things)も見たくない。なぜなら、私たちはアジアを代表しているのだから」
日本代表が大会最多となる5回目の優勝をかけた決勝前日の1月31日の記者会見。吉田麻也主将が英語で語ったことが、世界中に報じられ、好感を受けた。
「私たちは(大会のスローガンの)『BRINGING ASIA TOGETHER』(アジアを一つに)のハッシュタグを掲げている。アジアを代表する者として、よいサッカーをすることが、アジア諸国に重要で有益だ。明日のカタール戦もフェアプレーをしたい」
意識して言葉を選択したかどうかは不明だが、あまり会見にはそぐわない「愚行」という強い言葉を使った吉田選手の発言は、大荒れだった1月28日の準決勝2試合を見事に描写していた。
日本が3-0で完勝したイラン戦の終了間際、乱闘騒ぎが起きた。間違いなくアジア最強の実力を持つイランは、同大会無失点、アジア諸国との公式戦無敗記録39で迎えた日本戦だったが、いずれの記録も日本に止められた。しかも完敗とあって、フラストレーションが一気に噴き出し、日本選手への危険なプレーが特に後半に入って目立った末の乱闘騒ぎだった。
イラン国内からも批判が噴出し、SNS上では、「恥ずかしい」「大人の行為とは思えない」といった書き込みが掲載された。AFP通信によると、イラン議会のモタハリ副議長も自身のインスタグラムで選手の実名を挙げて処分を求めている。
「テロリスト国家、暴力国家と米国やイスラエルから非難されている中で、世界にあのような姿をさらしたことは、国家にとっての致命傷であり、彼らには処分を下すべきだ」