政府が子連れ出勤を後押しする。選択肢が増えるのはいい、という意見もあるが、深刻な少子化の状況のなか、やるべきことはほかにあるのでは、との声もあがっている。
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1月15日、宮腰光寛少子化担当相は茨城県つくば市に視察に出かけていた。子連れ出勤を認める授乳服メーカー「モーハウス」を訪れ、そこで働く母親の赤ちゃんを抱っこし、名前を尋ねては話しかけ、すっかり上機嫌だった。
その後の会見で子連れ出勤の支援策として、自治体への交付金の補助率を上げることを表明。会見中には、こうも語った。
「乳離れしていない子どもにとって、お母さんがいつも近くにいるということはなかなかできることではない。実際に実現できているということは本当にすばらしい」
「子育ては母親の役目」と言っているようにも聞こえ、何だかまた安倍政権っぽい……とも思ってしまいそうだが、本人もそう感じたのかどうか、直後に、「子育て中の女性だけではなくて男性にとっても考えていく。仕事しながら子育てができるという意味で、子連れ出勤、男性の子連れ出勤ということも検討していくべきではないか」と加えた。
その後、18日の記者会見で宮腰氏は先進的な取り組みをする自治体には、交付金の補助率を2分の1から3分の2に引き上げると発表した。子連れ出勤は、もともと昨年6月に政府の少子化克服戦略会議が出した提言の中で、具体的な施策の例として「中小企業の子連れ出勤の環境整備」「サテライトオフィスの整備など、大都市への通勤を不要とし職住近接で働くことを可能とする環境整備」などが挙げられたことが発端だ。
これに対しては「仕事の片手間で子どもの世話をするより、環境が整った保育園でみてもらったほうがいい」「保育園の整備が先ではないか」「選択の幅が広がる」など、賛否両論の声が出ている。モーハウスは子連れ出勤を認めているが、歩けるようになるまでが目安だ。
職場への子連れ出勤ではないが、都心部ではすでに霞が関の文部科学省、永田町の国会や、いくつかの企業で企業内保育所を設けている。「子連れで通勤ラッシュの電車に乗るのは子どもにも周囲にも迷惑」といった批判は絶えないが、利用者はいる。実際のところ、希望者が多くて全員は入れない状況だ。