また、90年の発表から終末時計の判断要素に加わった気候変動問題では、脱炭素に対する世界の取り組みがなかなか進まない現状を問題視。パリ協定から離脱した米国が、一部の国と組んで、国際社会の努力を妨げようとしているとして批判した。
加えてサイバーテロの脅威やフェイクニュースの氾濫など「情報環境」を取り巻く状況の深刻化、技術革新が続くIT分野での技術悪用への懸念なども判断材料にしたと説明。どう考えても世界は昨年以上に不安定になったとしか考えられないような懸案事項の列挙だった。
「文明の未来が昨年と比べ、より安全になったのか、危険となったのか。過去70年と比べてどうだったのか」
これが終末時計の時刻を決める上での根本的な物差しだと、ブロンソン社長は説明する。
創設当時「7分前」だった47年の最初の発表以降、時計の針は終末に近づいたり遠ざかったりしながら、現状を鋭く風刺してきた。最も遠ざかったのが、ソ連崩壊で冷戦が終結し核軍縮への期待が高まった91年の「17分前」。最も近づいたのが、前述の通り「2分前」だ。
いずれにしても過去70年の平均で、時計の針が実際に動かされるのは数年単位だった。しかし、17年、18年と2年連続で時計の針が30秒ずつ終末に近づいた。これまでの平均的な傾向と比べると、2年連続は異例だったと言える。それだけ危機感が強まったことを意味するが、その傾向が継続する中で、今年は状況の推移を注視する時だった。それだけに時計の針を動かす年ではなかったとも言える。
この70年間で「2分前」を切ったことは一度もないだけに、そうなる前の最後の宿題として、現状の改善努力を世界各国へ呼びかける今年の終末時計だったように感じた。
会見でブロンソン社長が最後に残した言葉が印象的だった。
「なぜ2分前なのか。異なる意見があるなら、それはどうしてか。そうした議論を世界中で呼び起こすことが我々の一番の希望。そうした議論の機会を世界に広げられれば、終末時計は正常に機能していると言える」(アエラ編集部・山本大輔)
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