AERA 2019年1月28日号より(写真:横関一浩)
AERA 2019年1月28日号より(写真:横関一浩)
AERA 2019年1月28日号より(写真:円城寺さん提供)
AERA 2019年1月28日号より(写真:円城寺さん提供)

「同じ釜のメシ」を食べてつながる人間関係は昔からあった。ネットが介在し“場”を作ることで、新しい出会いやコミュニケーションが生まれている。いまや世界の家庭にも国内にいながらにしてアクセス可能だ。

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マッチングサイト「Tadaku(タダク)」には日本在住の80カ国、300人以上の外国人ホストが登録。ホストの自宅で家庭料理を習ったり食べたりできる。

 サイトをのぞくと、皮から作るウイグルの羊肉の水餃子やロシア正教の断食中に食べるビーガン料理、約1万円もするのに人気だというアーユルヴェーダの講座とセットのスリランカカレー教室等、好奇心をくすぐられるラインアップだ。

 シリア料理のエティマルさんは人気ホストのひとり。日本人男性と結婚し、子どもは小学生。東京都北区の自宅を訪ねると、

「料理、トーク、全てを楽しんで。ハッピーな時間を過ごしましょう」

 と英語で迎えられた。エティマルさんはシリアの古都アレッポの出身。病院に勤めていた07年、マネジメント研修で来日し夫と知り合う。両親やきょうだいは現在内戦下のシリアで暮らしており、日本では自国の情報が限られている分、“等身大のシリア”を伝えたい思いが強い。

 この日は大学生や看護師など3人が参加。シリア料理はみんな初めてだ。まずシリアの地理や文化のレクチャーを受け、その後、調理に。メインの「なすのケバブ」はひき肉だねをなすにはさみ、トマト等と重ね焼く。ひき肉にスパイスや野菜を混ぜ込むと、エティマルさんは手に取り匂いを嗅いだ。

「こうすると脳が刺激されレシピを思い出すんです。少しずつ味つけを加減します」

 2時間半でメイン3品とサラダが完成。鶏スープで煮た特大クスクスは口の中でプチプチする食感が新鮮だ。シリアンライスは炒(い)ったパスタが米と一緒に炊き込まれている。香辛料のたったエキゾチックな料理なのかと思いきや、どれもマイルドな味わい。日本の食卓になじみそうだ。

「料理には豆やナッツ、野菜、果物、オリーブオイルをよく使います。へルシーであることを大事にしているんです」

 フレンドリーで快活なエティマルさんのホスピタリティーもおいしさのうち。食べることで、世界の扉も開きつながれる。

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