政治家だって出産も育児もする。たとえ彼女が一国の首相であっても、村議会の議長だったとしても。
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群馬県榛東(しんとう)村の村議会議長、南千晴さん(38)は2018年10月に都内であった泊まりがけの県の議長の研修会に、母親も連れて参加した。6月に生まれたばかりの長女の面倒を見てもらうためだった。研修の間は母親に長女の面倒を見てもらい、昼休みには抱っこしながら一緒に昼ご飯を食べ、授乳をした。
26歳の時に村議になった。大学を卒業して地元で働き、仲間とイベントを催す過程で役場とのかかわりができ、若い世代の声を政治に生かそうと立候補、当選したのだ。
もちろん村では史上最年少だったし、4期目の今でも議員のなかで最年少だ。とはいえキャリアは順調に積み、17年4月に議長に就任した。「議会で質問したことが実現できて、住民に喜んでもらえる」と議員の仕事に手応えと喜びを感じている。
議員になった当初は、「結婚や出産は望めないものだと思っていました」。しかし、同村を選挙区に持つ小渕優子衆院議員(45)が結婚して出産、2児を育てているのを見て、「議員でも両立ができるんだな、と」。
17年春に結婚し、18年6月上旬に出産した。それまで村議会の規則には「出産」の文言はあったが、具体的に休める期間の言及はなく、南さんの妊娠を機に「産休は産前6週間、産後8週間」と明記された。現役の地方議会議長が出産したケースは、そもそも女性議長が少ないうえに、年齢の問題もあり、おそらく彼女が初めてとみられる。
国会でも女性の妊娠や出産にまつわる制度ができたのはそう古い話ではない。参議院では2000年の橋本聖子氏(54)の出産を機に産休の制度ができた。女性国会議員の出産第1号は1950年の園田天光光(てんこうこう)氏。半世紀を経ての第2号だった。衆院では翌年、水島広子氏(50)の出産がきっかけで制度ができた。