相続などの実家のトラブルは、どの家庭でも起こりうる。きょうだい間だけでなく、血縁関係のない親戚も間に入ってきて揉めることもある。
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激しいののしり合いは、母親の葬儀が終わった晩に始まった。
「なんで兄貴だけ家のお金を使ってしまったんだ」
「私らはお金をもらってない」
4年前、関西地方に住む男性(68)の母親(当時86)が亡くなり葬儀を終え一息つくと、妹(63)と弟(58)が突然切り出した。
男性は40年前、学生時代からの夢でもあった社会福祉事業として介護施設をつくった。その際、両親は男性の活動を応援してくれ5千万円近くを援助してくれた。きょうだい2人も「お兄ちゃん頑張って」と言ってくれていたので、理解してくれているものだと思っていた。が、本当は違ったようだ。母親の死を機に、不満が一気に爆発した。しかも2人は、男性が両親から援助してもらった額を、なぜか3倍近い1億3千万円余りだと思い込んでいる。
「兄ちゃんは使い込んでなどいない。そもそも、実家に1億円以上の財産があるかどうか、考えたらわかるやろ」
男性が何度説明しても、2人は納得しない。社会福祉施設は行政が建ててくれるものと決めてかかっている。
「もっとお金を隠しているんじゃないの」
とまで言われ、大げんかに。その日以来、男性は2人と断絶状態になった。相続を放棄するから、実家を売却したお金を2人で分ければいいと伝えても一向に返事がないという。
「悲しいもんです。お金が絡むと人は変わってしまう」(男性)
人生100年時代。相続や生前整理、介護など実家をめぐるトラブルは、今や他人事ではない。そこで本誌は11月、AERAネットを通じ「実家の問題」についてアンケートを実施した。「実家」「生前整理」「相続」「介護」「墓」などに、深刻な問題を抱える回答が寄せられた。
首都圏に住む女性(50代)の目下の不安は、3年前に亡くなった父親が実家の敷地内に建てたアパートだ。